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2015年12月15日 (火曜日)

個人加盟労組ということの意味(その2-「個人」の変化1)

日本における合同労組の結成は、戦前は左翼的イデオロギーのもとで、そして戦後はGHQの戦後民主化政策と総評の「中小対策オルグ」配置によって進められてきました。

ここでいう合同労組は、職場組織を作ること、あるいは職場組織単位の活動を前提としての合同労組です。この合同労組の形成と運営には、その地域や産業(産別)に対応して配置されたオルグ(オルガナイザー:労働組合の組織者)が当たりました。

戦後(とくに1950年代から70年代)は、大企業労組ではカバーできない中小企業の労働者の組織化のために、オルグが地域に張り付いて、文字通り労働者を一人ひとり合同労組にオルグして、そしてその企業で一定の影響力を行使できる段階になると職場組織を「公然化」(組合作りが経営側に知られると、その切り崩しが行われるために、職場組織の結成通告までは、経営側に知られないように組合を準備する)しました。公然化後は同じ地域や同じ業種の労働組合の力を借りて、労働者の要求実現のために活動する形になります。

この、戦前・戦後タイプの合同労組(以後、「合同労組オリジナル」とします)とはあくまでも職場組織を前提とした合同労組なのです。この場合の「個人加盟」とは、労働組合を準備するための地域合同労組などへの個人加盟であり、その職場組合組織が結成された以降は、その職場組織の上部団体への個人加盟ということになることが多かったのです(組合結成後に、その合同労組が「企業内組合」化して、合同労組から離れてしまう場合は、その企業内労組への個人加盟となります)。

ところで、昨今の個人加盟労働組合(地域ユニオンや課題別ユニオン=これを仮に「ユニオンタイプ」とします)の場合、「個人加盟」の意味合いが「合同労組オリジナル」とはかなり性格が違います。

「ユニオンタイプ」では、「合同労組オリジナル」のように、オルガナイザーが地域でビラを配ったり、職場近くの労働者のたまり場(職場近くの居酒屋とか、地域の文化・スポーツサークルとか)で顔見知りになったりした労働者をオルグ(組合へ勧誘して)して加入させる、という経過をとらないことが多いのです。どのような形をとるかと言えば、ホームページやブログあるいはSNSなどのWEB情報、マスメディアの報道などによって、個別労働問題(解雇や退職勧奨やハラスメント、病気休職問題など)の相談や解決を求めて、個人労働者の方から労働組合に接触をしてくるのです。そして、ユニオンはこの相談に対応する中で、その相談に来た個人の問題の解決について、雇用主に対して団体交渉を申し入れます。「合同労組オリジナル」タイプでの公然化は、ユニオンタイプではいわば「ひとり公然化」として行われることが多いのです(ただし、オリジナルタイプの伝統を持つ「合同労組」は現在でも、一定の組合員が揃うまでは公然化しないことがあります)。

労働相談から、短期間のうちに労働組合に加入して、個人組合員の労働条件や労働環境について団結権と団交権を行使する。これがユニオンタイプの活動の特徴で、だから、ユニオンタイプは完全個人型合同労組ともいえます。

このオリジナルタイプからユニオンタイプへの「個人加盟」の変化にはそれなりの背景があると考えられます。詳しくは次回以降に考えたく思いますが、変化の背景として次のようなことが挙げられます。

1、労働組合の企業内化:企業別組合が企業内の労働管理部門的な役割になってしまい、地域の労働者の生活や権利について関心がなくなったこと(とくに、産業別大企業労組は無関心)

2、産業構造の変化:戦前・戦後の労働集約型で工業中心の「職場」から商業、金融、サービス業中心となり(1980年代が変わり目)、労働形態、就業状況が大きく変化したこと

3、一つの職場に働く労働者の居住地が多様化し、かつ遠隔地化したこと、あるいは個々人の思考の多様化によって、同じ職場に働く人が集まる場が少なくなった(社員旅行の中止などは象徴的)こと

4、情報処理手段の変化(IT革命以降)によって、一つの職場に働く人たちの情報交換の形態が大きく変わったこと

5、労働者一人一人の保有する情報量が桁違いに大きくなった(PCのHDD、あるいはデータ記憶媒体の中には、一人の人間が一生かけても読み切れないほどのデータが有り、また、個人が利用できるWEB上のデータは(労働分野に限っても)無限と思われるほどである、ということ

6、情報の横溢に反して、個人情報の保護や企業情報の秘密管理については厳格化されていて、特定の「他者」(隣で働いている人とか)の情報が得られにくい社会になっていること

以上の他にもまだあると思いますが、仕事と個人のあり方が数十年間の間に大きく変化した日本において、合同労組の活動スタイルや、個人加盟労組における「個人」の位置づけも大きく変化してきたのです。

(つづく)

カワセミ

2015年12月 8日 (火曜日)

個人加盟労組ということの意味(大げさに言えば歴史的変遷 その1)

私たちNU東京は、個人加盟方式のユニオン(労働組合)です。

しかし、考えてみれば、個人加盟でない労働組合などというものは存在するのでしょうか?

1)合同労組が、その加盟単位を職場労組組織とすれば、個人加盟でない

2)もしかしたら、会社に入ったら加盟することになっている企業内組合は個人加盟でない?

2)の場合は、やはり個人加盟です。形としては、まず企業内労働組合に、その企業の従業員として採用された個人が加入して、そして、その企業内組合に加入したことではじめて、その人が採用され得るのです。これをユニオンショップ制といいます。

ユニオンショップは、会社(雇用主)とその会社の労働組合が労働協約(労働組合と会社が取り結ぶ協定で、これは就業規則や労使協定よりも優先します)を結び、そのユニオンショップ協定を結んでいる労働組合の組合員でなければ社員として採用しないことになっているのです。要するに労働組合員であることが社員の条件になるのです。

このユニオンショップ協定においては、その対象を正社員の非管理職とする場合が多くありますが、その場合はパートやアルバイト、あるいは契約社員などの「非正規」従業員や管理職採用された従業員はユニオンショップの対象から外れます。

管理職をユニオンショップの対象(あるいは労働組合員の対象)から外すというのは、元々は。管理職を通しての労働組合への支配介入行為を防止するための手段であったので、それなりに納得できる面があります。しかし、「非正規」従業員を対象から外すのはどうか? ここは大いに議論が生じるところです。

話を戻します。とにかく、ユニオンショップは個人加盟の形式をとります(ユニオンショップ問題については今後触れていきます)。

で、つまり組織単位加盟による地域合同労組以外の労働組合は全て個人加盟労働組合なのです。

しかし、多くのユニオンは「個人加盟労働組合」「個人でも加盟できるユニオン」ということを前面に出して活動しています。私たちNU東京も、そう言えるかも・・・・

もう少し整理します。

実際は、個々人が加盟する労働組合(ユニオン)でも、その活動においては個人が単位にならないことがあります。それが職場組織です。○○ユニオン(○○労働組合)○○支部あるいは○○分会という形で、活動単位が支部あるいは分会とされている個人加盟ユニオンは多くあります。この場合、一人しかその会社・職場に組合員が存在しない場合、どうするのか?これまた、いくつかのケースがあって、

1)その職場に一人しか組合員がいなくても支部あるいは分会名を名乗る(そして全従業員の労働条件について要求を提示して堂々と労使間交渉を持っていく)

2)特定の地域に存在する職場に一人の組合員を集めて、その地域ごとの支部・分会を形成して、その支部・分会として組合員が存在する各企業の労働条件等について交渉していく)

3)はじめから、一人一人の組合員を組織単位として、その一人一人が働く職場での労働条件などについて、合同労組(ユニオン)が経営と交渉していく

となります。

1)と2)は、いわば古くからの合同労組のスタイルで、全国一般労働組合とか全統一労働組合は、この形を取ることが多く、3)はいわゆる「ユニオン型」で、その典型的なのが「管理職ユニオン」や「女性ユニオン」など、職場の結びつきというよりも労働者の地位・性別などの属性による労働組合です。「ユニオン型」(と仮にします)の合同労組の場合、個々人が直面している雇用問題をストレートに扱います。また、解雇・退職勧奨や休職問題、病気や職場いじめなどの個々人に関わる問題に対応しやすいという特質がある半面、企業・職場全体の雇用条件や労働環境問題には一工夫が必要(個人の持つ情報の限界もあり)という面があります。

当然、どの形式の労働組合、合同労組でも、労働三権(団結権、団交権、団体行動権=労働争議権)という、憲法28条のもとに活動できます。

つづく

(かわせみ)

2015年12月 1日 (火曜日)

私たちの組合(ユニオン)のこと ☆その3 全国一般労働組合のこと

私たちのユニオン(労働組合)が、合同労働組合であり、さらに「一人でも加入できる合同労働組合」(職場組織単位ではなく個人個人が加入する合同組合)であること、そして、それは全国一般労働組合という合同労働組合の系統上に位置づけられること、については前回までに書きました。

では、全国一般労働組合とは何か?「全国」はわかるが「一般労働組合」とは何か?あるいは「全国一般」「労働組合」と区切って、その名前の意味をとれば良いのか?

こんな疑問は、まず「一般的」には生じません。このような疑問を持つ人は、何らかの形で労働組合運動やその組織に接し(たとえば会社経営者とか労務担当とかの人)、、さて、いま私が直面しているこの組織の名前は、どういう意味を含んでいるのか?と考えるときにしか生じない「疑問」だと思います。

個々の労働組合の名称はどう付けてもかまいません。たとえば「紅葉」でも「かわせみ」でも良いのです。「労働組合かわせみは、以下の議題での団体交渉を、1週間以内に開催するよう会社に求めます」というような文書もありうるのです。これに対して、会社が「そんなふざけた名称の労働組合とは団体交渉を行わない、名前を会社にふさわしいものに変えろ」などとしたら、それは労働組合法違反となります(団体交渉拒否と組合活動への支配介入という、労働組合法第7条に定められている不当労働行為の二項と三項に当たります)。で、「労働組合かわせみ」ならば、まずは構成員が「鳥」のカワセミであるわけがありません。考えられることは組合員の多くがカワセミが好きだとか、会社のロゴやマスコットにカワセミが使われているとか、あるいは会社の敷地内にカワセミの営巣地とか餌場があって、なんとなく「かわせみ」といえば、その会社のイメージであるとか・・・・。とにかく労働組合名は会社や組合の何らかの性格・特徴を繁栄しているはずです(まったくイメージが結びつかない名前は、とても使いにくいので、まずは使われないと思います)。

全国一般労働組合とは、いま労働組合関係の人に、それもかなり民間の労働組合運動に関わっている人に聞けば、たぶん「それは中小企業の労働組合だよ」とか「いろいろな産業の中小規模企業の組合だ」とか「労働争議をよく行っている組合だ」などと答えてくれるはずです。

全国一般労働組合という名称は、「中小企業」の労働組合あるいは中小企業の労働運動と関連する名称のようです。

ここで、文献にあたります。

1981年に刊行された「戦後中小企業争議史」(労働教育センター)という本があります。書いたのは倉持米一氏。倉持さんは既に1984年の2月に63歳で他界されていますが、全国一般労働組合の結成には、その中心で尽力された方です。その「中小企業争議史」には合同労組のこと、全国一般労働組合のことが述べられています。

「その当時(1951年頃)、中小企業の労働組合を数多く抱えている単産といえば、全国金属、化学同盟、それに私たち全木産でした(中略)、中小企業労働者の組織化をどうすすめていくか、ということを集まって論議すれば、いつもカチャガチャ論争になりました。その論争は、端的にいえば、中小の労働組合を産業別に整理して、それぞれの単産が指導するとする“産業別整理論”と、各地域に、産業の違いをこえた合同労組をつくり、それを全国的に結集し、全体的、統一的な視野で中小企業労働運動を指導しようとする“合同労組論”の対立でした」(同書27ページ)

「“合同労組論”の基本的考え方は、(1)中小企業労働者の組織化に、全国的、統一的に対処する。(2)そのためには、各地域の実情を十分考慮に入れた地域合同労組を結成し、官公労、民間大単産の援助を受ける。(3)個人加盟を原則とする。という点にまとめられるだろうと思います」(同書28ページ)

そして全国規模の「一般産業」(木材・木製品産業、商業、サービス産業、事務)労働者などを対象とした合同労働組合である全国一般労働組合が結成されたといいます。

その全国一般労働組合の系譜を私たちNU東京は受け継いでいます。

ところで、全国一般労働組合が、中小企業の、その他一般の労働者を対象にして結成されたのは、いまから60年ほど前。その当時は、労働組合の組織率は35%ほどもあったといいます(現在は17%ほど)。そしてほとんどの労働組合は正規雇用の工場労働者によって成り立っていました。隔世の感があります。現在、日本の労働者の40%は派遣、契約、パートなどの「非正規」であり、また多くの労働者が働いている産業は商業、サービスであり、職種も事務・販売・営業が多くて、それらは、かつて少数で「その他労働者」とされていた「一般労働者」です。

現在は一般労働者の時代、しかも無権利で組織されていない一般労働者の時代である、ととらえ返すならば、今日における合同労働組合(地域ユニオンなど)の重要性が感じられます。

(かわせみ)

2015年11月 6日 (金曜日)

明日は、私たちユニオンの定期大会(それにしても、この20年、労働者の生活は酷くなりました)

またまた、久々の書き込みになります。

明日11月7日は、私たちNU東京の第21回定期大会です。

この間に、多くのことがありました。一番の大きなことは、1998年から今日まで、延々と労働条件の低下が続いていることです。いわゆる正規労働者が少なくなり、契約、派遣などの「非正規」労働者が増えました。そして一世帯の収入をまかなうためには、共働きとアルバイトが必要になる家計が増えました。他方、1998年以降今日までの間に、「戦後最長の好景気」と言われる、「いざなみ景気」が、多くの労働者の生活実感とは別に生まれていた、大企業は大いに利潤を上げたようです。

要は、バブル経済崩壊後の「長期不況」下で、労働者の賃金が大いに減り、また製造業企業の製品生産の場が、より賃金の安いアジア諸国などに移り、結局は大手企業が利潤を上げたということになっているのです。

2008年にはリーマンショックがありました。これは、世界の隅々まで(旧ソ連・東欧や中国まで)市場化が進んでいくなかで、さらにバーチャルな空間(債券市場)に利潤を求めたが、それが崩壊したことで生じました。また2011年3月11日には東日本大震災と福島原発の爆発事故がありました。日本は大いに動揺しました。当時既に自民党政権は格差拡大問題(ワーキングプアなど)や相次ぐ議員の不正・スキャンダル、残業代ゼロ法案(「ホワイトカラーエクゼンプション)の導入の企てなどで、政権を追われていたのですが、その後に政権を担った民主党は、結局市場原理主義の政策以上は打ち出せず、加えて民主党と電力業界の労使共々結びつきが強かったので、原発事故にも対処できず(労働団体の「連合」は2011年のメーデーで原発事故を取り上げることを辞めたほど)、国民の支持を急速に失いました。

で、今日、労働者の状況はどうなっているかというと・・・。

いつの間にか、かつては特定の業種に限られていた「派遣」労働があらゆるところで取り入れられ、加えて、有期雇用労働者は正社員に至る道を大きく妨げられ(有期労働法制によって)、そして消費税はやがて10%にもなり、法人税は引き下げられ、貧しくなる一方の労働者は生活苦にあえぐようになっています。

アベノミクス?? なんのことでしょうか?? 賃上げするって? どこで賃上げがなされましたか? 株価が上がった? 国民の財産である年金基金などの公的資金で株を買い支えたそうですが、それで儲かったのは株屋さんと投機筋? 一説には株投資の失敗で年金の元手が大いに減ったとの報道すらあります。

世の中には、労働基準法や労働安全法を無視して、労働者を文字通り死にいたるまで酷使する企業、劣悪な雇用条件のもとで、労働者をボロ雑巾のように使い捨てる企業、すなわちブラック企業が闊歩し、これと伴って労働者いじめに荷担するブラック士業(一部の弁護士や特定社労士)がうごめいています。

労働組合は、いわゆる既婚加盟型の合同労働組合(ユニオン)が、かろうじて検討しているといえますが、今年あれほど安保法制改悪に対する運動が国会周辺などで盛り上がったにもかかわらず、また反・脱原発運動がいまも活発に繰り広げられているのに、派遣や有期雇用契約などの労働法の改革に対する運動は今ひとつです。

社会の最も基本的な部分が「労働」であることは、論を待たないのに、その労働分野、私たちの社会の基層が日々資本によって侵食されていることに、労働運動は十分に対処できていません。また、戦後長く続いた日本の企業別労働組合では、このような日本の労働の基本的問題には対処しようがないのかもしれません。

明日は、私たちNU東京の定期大会です。小さな組合ですが、なんとか現代の労働をめぐる課題に対処できるような方向性を打ち出していきたいと思うのです。

「かわせみ」の独り言でした。

2014年6月18日 (水曜日)

アベノミクスのインフレ政策で、残業ゼロラインが引き下げられたら・・・!将来は現在年収500万円レベルも残業代ゼロとなる。

久しぶりに(本当に久しぶり、1年と数ヶ月カワセミは不在でした)書きます。

安倍政権による残業代ゼロ法案、なにやらその対象者を「1000万円以上」にするということ、つまり「残業代ゼロライン」が、法案が成立した後に下方修正されそうです。そういえば、かつての第一次安倍政権のときは800万円という線が出ていましたが(それすら怪しく、もっと下げられるのではという見方もありました)、今回もどうやら、その800万円ラインにこだわっている?

ところで、この将来における「残業代ゼロライン」ですが、アベノミクスのインフレ方針が貫徹されたとしたならば、10年後には現在の年収500万円が800万円近くになるのではないでしょうか? つまり貨幣価値が無くなってしますのです。と、考えると・・・・。

安倍自民党政権の残業代ゼロ法案の「金目」は10年後には現在の年収500万円レベルをもってする、ということになりそうです。何とも恐ろしい! アベノミクスは全くの竜頭蛇尾、羊頭狗肉で、経済政策は総破綻の過程にありますが、労働者に「ただ働き」を強いて、政策の破綻を繕おうとする魂胆は見え見えです。

安倍政権とは、一方で軍需産業を育て「死の商人」を養い、また原子力を輸出して害悪・汚染を世界に広げ、他方国内では、労働者を絞れるだけ絞り、その生活を破壊し、労働者を企業に隷属させていく戦後最悪の政権ではないでしょうか?(そうそう、NHKを、どこかの軍事独裁国家の「公共放送」並に、政権の宣伝手段として使い始めているのも大問題です)

こんな政権は一日も早く終わりにしたいものです。そして、残業代ゼロ法案は断固として阻止! です。

(留鳥カワセミ)

2013年3月22日 (金曜日)

アベクロ、棄民政策のもとで、IT労働者に仕事が回ってきた? でも、ブラック企業は無くなっていません。仕事選びは慎重に!

黒田東彦を日銀総裁に据えて、安倍政権は2%インフレ政策を推し進めようとしています。これに合わせるように、電気・ガスが値上するといいます(理由は円安などのようですが、まさに政策によって作られた値上げです)。しかし、マスメディアが取り上げた一部大企業の賃上げ(しかも、正社員の賞与だけが多い「名ばかり賃上げ」)のほかには、賃上げの話は滅多に聞きません。逆に大企業の中でもパナソニックなどは大幅賃金カット! 

黒田総裁は「できることは何でもやるし、達成できると確信している。円高、新興国からの安い物資の流入など、あらゆる要素が物価に影響するが、物価安定を確保する責務はどこの国でも中央銀行にある」などと宣言していますが。これは、労働者の生活など関係なく、とにかく物価を上げるというとんでもない見解で、まず政策の目標達成があり、人々の生活はその次というような、異様な「ご奉公」の姿勢です。

このままいくと賃金は上がらず物価だけが上がる最悪の状況が訪れます。

また、多くの人が指摘しているように、たとえ株価が上がったとしても、それが実体経済に結びつかず、さらにマネーゲームに投資され、実態無き好況が作り出される恐れすらあります。

このような状況、つまり結果がどうであろうと新しい経済政策が動き出すときに、活況を示す業界があります。それはIT業界です。安倍政権の「国土強靱化」にも、まずはIT環境の整備が必要です(東日本大震災で問題点が多く見つかったITシステムの作り直しも必要です)。消費増税に対応するシステムも作らねばなりません。そしてインターネット選挙。これこそ、IT業界しかできません・・・・・・。などなど、いまIT業界では、労働力不足気味? 某IT業界の営業マンは、ユニオンの問いかけにはっきりと言いました「いまは、待機労働者など出ませんよ」って。

そういえば、わがユニオンが関わるIT会社には、退職勧奨を強引に行っていた会社、待機労働者を整理し始めたいた会社が多くあるのですが、最近、退職勧奨の話が少なくなりました。またIT技術労働者からの相談も減ってきています。

私たちが過去・現在交渉を行ってきたIT企業は45社ほどになります。会社規模に関係なく、その中にはキチンとした企業もあれば果てしもないブラック企業もありました。できれば、いまのようにIT労働者に仕事が回った来ているときに、ブラック企業、労働者の権利を顧みずに使い捨てをする企業には人が行かないでほしいのすが、現実はそうはなっていません。IT労働者間では「○×社や××社はブラック」などという情報はある程度共有されているものの、常に新しく供給される若い労働者にはなかなか伝わらないし、不安定な雇用状況しか経験のない。ITバブル以降世代の労働者には「とりあえず仕事の確保」という意識が強く働いています。

せめて、IT労働者は、新しく働く企業・職場との労働契約をキチンと文書で結ぶこと(労働契約書は双方が保持するもので、IT会社にありがちな「自分の契約書を会社に渡す」はなしです)。その契約の際に労基法などの法に抵触するような内容の契約を求める企業には行かないこと。もし入った企業がブラックだった場合、すかさず辞めてしまうか、働き続ける場合は日々の記録をキチンととっておくこと。

そう、大事なことを忘れました。いくら仕事があるからといって、あるいは仕事上必要だから(会社からの要請含む)といって、身体をこわすまで働かないでください。

この働き方はおかしい? この会社、おかしい? た感じたら、ユニオンに相談を。

2013年2月27日 (水曜日)

NU東京結成15周年の日に、思いつくまま書きます。

わたしたちNU東京は、1998年2月27日に結成されました(当時の本部所在地は板橋区)。ということで、気がつけば今日は結成15周年の記念日です。

この15年間に私たちが受けた労働相談件数は1万件を超えます。寄せられる相談のテーマは解雇、退職勧奨・退職強要、ハラスメント・嫌がらせ、出向・転籍、降格・減給、賃金(残業代含む)未払い、遅配・欠配、病気・休職そして労働組合作りと、ほぼ変わりませんが、その内容は深刻化しています。

まず、賃金が大幅にダウンしています。IT労働者の時間あたり換算の賃金は、ほぼ半減したといって良いと思います。加えて労働密度が高まり、過重労働となり、これによる病気休職の相談が多くなってきました。

この15年間は、日本における製造業従事者が減少した15年間でもあります。NU東京結成時の1998年は、日本がバブル経済の傷を負いながら製造業主体から非製造業主体の産業構造へと大きく動き出したときでした。1990年代半ばに日本は非製造業社会に舵を大きく切りました。そして「正社員」中心から「非正規労働者」の大量採用へと大きく動きました。このような労働者を取り巻く環境の大変化は労働者を個々バラバラに経営者と向き合わさせ、形だけの「労使間の自由な契約」のもとで、労働者に不利な労働条件を押しつけ、そして労働者の生活は苦しくなる一方なのに、日本は「いざなみ景気」(戦後最長の「いざなぎ景気」並の好景気)を生み出したのでした。いつの間にか大企業の「内部留保金」が数百兆円にもなるという、格差と富の偏在が生じていました。

この富の偏在と社会的不幸へが、誰の目にも明らかになったときに(安倍第一次内閣が残業代は払わなくて良いなどという法律を作ろうとしたことを忘れてはなりません)、自民党政権は崩壊し、民主党中心政権が(短命ですが)生まれました。

15年の間に、さらに二つの大きなことが起きました。

一つは2008年9月の「リーマンショック」であり、これは市場原理主義と「経済学」の破綻を印象づけました。

もう一つは2011年3月11日の東日本大震災と引き続き起きた福島原発の爆発事故です。これは、政府が長年続けてきた原発行政のデタラメさを一気に明らかにしました。

この二つの事態は、私たちに世界のあり方と日本のあり方を根本的に問い直す必要を感じさせました。それはまた、日本の社会のあり方を問うものでした。

しかし、日本の労働組合活動は、このような大事なときに停滞し続けています。

その大きな原因は企業別の(企業と一体になった)労働組合のあり方があります。また、製造業の従事者が1000万人を切るまでになっているのに、労働運動の形は未だに「重厚長大」で、個々人がバラバラになって働いている、日本の現状と乖離してしまっています。日本の労働運動の作り直しも必要だと思います。

長々と書いてしまいました。

とにかくNU東京結成15周年です。

といっても、特に記念イベントはなし。ただ、私たちは日頃の活動を淡々と続け、その活動の中から新しい労働運動の形を模索するのみです。

(かわせみ)

2013年2月25日 (月曜日)

3月7日(木)~9日(土)に、関西地域で「年度末! 解雇・雇止めホットライン」開設。

派遣パートユニオン・関西と管理職ユニオン関西の共催による労働相談ホットライン、「年度末!解雇・雇止めホットライン」(労働相談ホットライン)が、3月7日(木)~9日(土)の3日間10時~18時の時間帯で開設されます。

次第は以下の通りです。

日時:2013年3月7日(木)~9日(土)の10時~18時

ホットライン電話番号

 大阪 06-6881-0781/0110

 神戸 078-360-0450

主催:派遣パートユニオン・関西/管理職ユニオン・関西

↓開催主旨は以下のサイトへ。

http://www.ahp-union.or.jp/hotline130307.pdf

☆東京地区の年度末雇止め/解雇相談は、NU東京へ

03-5363-1091 受付時間12時~19時(平日のみ)

2013年2月 1日 (金曜日)

日本の労働者の賃金が1990年以降最低、そして製造業就労者は1000万人割れという状況で、実は膨大な「未払賃金」が発生しているのではないか?

昨日の新聞報道によると、日本の労働者の賃金(賞与を含む現金給与総額)は、厚生労働省が統計を取り始めた1990年以降で最低額になったそうです。報道によると、給与総額は1998年以降下がり続けているということですが、ならば2002年1月から2008年2月までの73ヶ月間続いたという「最長の好景気」である「いざなみ景気」、あるいは1999年1月から2000年末にかけての「ITバブル」とはいったい何だったのでしょうか?

日本の労働者は、政府が何といおうと(自民党であろうと民主党であろうと)、一部の大企業や、怪しげな起業家・ヒルズ族が濡れ手に粟で利益を享受している一方で、確実に貧困化してきたのです。

とくに「いざなみ景気」は、労働者の賃金抑制、大幅な「非正規」労働者の採用によって、企業は利益を確保し続けてきました。労働者の犠牲の最終的な仕上げが「残業代は払わなくて良い」という悪名高き「ホワイトカラーエクゼプション制」の法的整備でしたが、これはあまりにも酷く、社会格差も拡大したために、小泉・安倍・福田・麻生と続いた市場原理主義を基盤視した特権世襲政治家による自民党政府崩壊の一因となりました。

一方、今日の新聞報道によると、日本の製造業就業者が51年ぶりに1000万人を下回ったとのことです。

51年ぶりといっても、52年前は農林漁業従事者が多かった訳です。ところが、現在は、製造業に変わるのは「農林水産」でなくて「サービス・商業」です。これは日本の産業構造が販売・金融・情報・サービスにシフトしているということで(1990年代半ばで製造業中心ではなくなっている)、この非製造業中心の産業構造は、ともすれば使用者側が都合良く労働者を使うことができ、労働者サイドから見ると、労働時間は増えても(サービス残業の増大)賃金が増えないという問題があります。

工場労働を中心とした製造業は、労働時間管理が明確な上、労働組合も(企業組合であろうと)組織しやすく、労働時間に対する賃金支給にごまかしがきかないということがあります。一方、サービスや商業労働の場合、IT技術の進歩もあわせ、労働時間管理ができず(あるいは企業があえて行わず)、時には24時間態勢で勤務しても、時間外労働はカウントされないような状況を生みます。

近年、過重労働問題(過労死、病気休職)が多発しているのは、このような産業構造の変化も大きくあると思えます。

政府(厚労省)の発表の通り、下がり続けている日本の労働者の給与所得において、どれほどの未払い賃金が発生しているか(この額は統計に表れず隠されています)? このことが問われるべきです。

もし、実際に労働者が働いた時間に対して正当な賃金が払われていたら、どのような統計数字になるのか? 労働相談を受け様々な事例に接する立場からすると、給与所得は「増えていなければおかしい」のです。

だから、日本の労働者の給与所得が最低になったという状況のその裏には、確かに低賃金労の「非正規」労働者の大量最良があるものの、一方では産業構造の大幅な変化と、デタラメな賃金支給(制度)によって、日本の労働者に対する未払い賃金(給与所得統計に反映しない)が大幅に増えているという現実も見なければなりません。

労働行政はいま、労働者の立場に立つことなく、死ぬほど働いてようやく「労災」という酷さです。せめて実労働時間の把握と未払賃金の支払いを求めるようになれば、ものすごく「税収」が上がるはずです。労働者の生活を破壊するアベノミクスのインフレ策や大増税策より、その方が先決問題です。

2013年1月29日 (火曜日)

職場のいじめ・嫌がらせに遭ったら、その背景を考えてみること。公務員労働組合(官公労)は業務委託先や下請け、「非正規」労働者の抱える問題に対応を!

昨年(2012年)1年間にNU東京が受け付けた労働相談(一定の時間話が聞けたもの)は350件余でした。そのうち4件に1件(24%)は職場でのいじめや嫌がらせに関する相談でした。

NU東京が受ける相談で件数が多いのは、職場いじめ、解雇、退職勧奨です(この15年間、この3つが毎年相談のトップ3です)。

職場での嫌がらせは、職場環境問題、会社組織の再編成(規模縮小や部門閉鎖)などが背景にあることがほとんどです。この嫌がらせの背景を見ないで「上司によるパワハラ」「同僚たちによる嫌がらせ」と考えてしまうと、問題は個人間の問題になってしまい、解決の糸口が見いだせなくなります。

たとえば、ある日、上司が嫌がらせとしか思えない業務命令を出し、そしてそれ以降厳しく仕事を監視するようになったというようなケース。その背景には上司が「人員削減目標」を経営陣から示され、その上司に目標達成の圧力が掛かっていると、考えてみましょう。

ある程度規模が大きな会社の場合、この「人員削減対象」が数十人あるいは数百人になる場合もあり、時には「希望退職者募集」とともに、職場での嫌がらせが発生することがあります。

このような場合、自分一人が嫌がらせの対象ではなく、ある条件の人(たとえば勤続年数が長いとか、短いとか、会社の「反主流」に属しているとか)が嫌がらせの対象になっているならが、それは嫌がらせ(パワハラ)が表面に出ているものの、人員削減・リストラが本質になります。従って、問題の本質は「嫌がらせをしている上司」ではなく、会社の経営陣にあることになります。往々にしてこのようなリストラ型嫌がらせの場合、その「上司」もさらに「上」から嫌がらせや退職勧奨を受けていたりします。

質の悪い上司の中には「人減らし」をするために雇われたような「嫌がらせ屋」がいるかもしれませんが、この場合も、本質は会社経営陣のリストラにあります。問題を大きくとらえて、労働組合に(企業内労働組合が「嫌がらせ」のためのシステムになってしまっている場合は外部のユニオンなどへ)問題を提起しましょう。

次に、環境型の嫌がらせ。職場の同僚からの嫌がらせで多いのは、劣悪な職場環境や低い労働条件が原因となっていることが多くあります。

所定時間を超えての長時間労働があり、しかも時間外労働賃金が違法にも払われない職場、働くためのスペースが十分になくて、労働安全衛生に配慮がない職場、同じ仕事をしている個々人の雇われている条件がまちまちで、しかもその基準が不明な職場(就業規則がなかったり、見せてもらえない=これは法律違反です)。

このような職場では、働く個々人間のちょっとした意見の違いや、感覚の違いが「嫌がらせ」に結びつくことがあります。雇用・職場のルールがキチンと定められていないために労働者間でのいがみ合いや嫌がらせが生じるわけです。問題の本質は経営側にあります。労働条件がキチンと定められていないために、労働者が個々人が、自分の雇用を守ろうとするため経営者に気を遣う(ときには経営者の機嫌をとったり、無理を承知で言うことを聞いたり)というのは本来おかしなことです。

最後に残念ながら、公益職場(自治体や公共の職場)から時折寄せられる嫌がらせの問題として、公共団体職員(公務員など)が現場の業務委託労働者に嫌がらせをするということがあります。同じような仕事をしていても公務員労働者と下請けや業務委託労働者の賃金には著しい格差があり、しかも職場では公務員労働者が業務指示をしたり、命令をしたりする。

問題は、現場労働者の労働条件を低く抑える業務委託契約などにあります。いわゆる「公契約」の内容が違法な労働条件や労働環境を生む場合には、これは規制されるべきですが、現実はそうはなっていません。

業務委託労働者や臨時委託労働者と接することがある公務員労働者(多くは「労働組合」に組織されています)には、その業務を行っている労働者の労働条件や労働環境について注意を払って欲しく思います。比較的「恵まれた」環境にあり、「強い」立場にある公務員労働者による現場の下請けや「非正規」労働者への嫌がらせは許されるものではありません。

公務員労働者により組織される労働組合(官公労)の、業務委託現場や下請け仕事における雇用・労働問題(嫌がらせ問題を含む)に対応する相談窓口の設置の必要性を強く感じます。

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