「ブラック企業」手法が蔓延する日本。基本はカルト対策と同じで、企業から離れること。
今野晴貴さんによる「ブラック企業」(文春新書)には、ブラック企業を知る入門書としては最適です。
ブラック企業とは、「黒い世界の会社」、つまり暴力団関係の企業と言う意味でなく、脱法行為(ときは違法)を繰り返して、労働者の心身ともに支配し、労働者の健康を壊し、そして「成長」あるいは「生き残る」企業のことです。マスメディアで大々的に宣伝をしている企業もあります。
「ブラック企業」ははじめ、主にネット上の言葉として登場してきました。今野さんは、この言葉が広く若ものに使われるようになったのは「2010年の末」としていますが、私たちのユニオンの相談受付でも、この言葉が、相談を寄せる人の側から発せられるようになったのは、だいたいその頃です。
「これって、ブラックですよね」とか相談者はいいます。また、その頃にはわがユニオンに多くいるIT労働者たちが「○○社、あそこって完全にブラックすで」とかとも言い始めました。
ブラック企業の定義はさておき、問題はいまや、このブラック企業が日本に蔓延しているということです。いまの首相である、安倍某からして、前に総理大臣だったときに「残業代は払わなくて良い」などという「ホワイトカラーエクゼンプション制」の導入を図ったわけですから、ある意味でブラック企業の後ろ盾ともいえるので、労働者の心身をむしばんでゆくブラック企業の経営陣は、いま、我が世の春を謳歌しているのかもしれません。
ブラック企業に対しての対応法は、「企業の社内論理よりも、法が優先」「会社の利益よりも、自分のからだが大事」という視点をもつことです。そして、心身ともに壊れる前に、必ず企業の外に相談の場を持ち、企業の外にある日本の法と、労働者保護制度を活用しながら(当然、労働組合もその一つですが、ブラック企業となっている会社のいうなりの企業内組合=御用組合は使えません)、失われたもの(未払賃金とか、壊された心身とか)を取り返す方法を考えることです。
なかには経営者のカルト的な価値観を労働者に押しつける企業もあるので、基本はカルト対策と同じと思っても大筋で間違いはありません。
今野さんの本を読んで、改めて感じたことに、ブラック企業の「人員整理」のしかたの悪辣さがあります。
かつて、私たちユニオンが結成されたころ(1998年)、世の中はリストラの嵐の末期ともいえる状態で、各企業には「人員整理屋」「人切り担当者」がいて、嫌がらせを伴う猛烈な退職強要を行って、それは時にはマスメディアで叩かれることもありました。しかし、それは、あくまでも人員削減(リストラ)の方策としての、嫌がらせ、退職強要で、それが終わると、今度は「人員整理屋」が不要となり、そして「リストラ」されました。
しかし、ブラック企業は違います。どこが違うか? それは企業のシステムとして人員採用段階から、違法な過重労働を前提にして、嫌がらせや退職強要を人事の恒常的システムとして、企業利益に直接結びつけています。労働者の心身破壊をシステムに組み込んで、これをエネルギー源として企業活動を行うのが「ブラック企業」です。
ブラック企業は一掃されなければなりません。
で、今日も1件、ブラック企業で働いている労働者からの相談がありました。最低でも月100時間の時間外労働、しかし、実際は20時間分しか払われないで、身体をこわしたら・・・。人事が「きみを雇うわけにはいかない」云々・・・・。
(かわせみ)
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