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2018年7月30日 (月曜日)

そんなことまで商売に?「退職代行業」に思う。

いま、日本は深刻な人材不足、というかそもそも労働力が不足しているので労働者不足です。だから政府は外国人労働者の「受け入れ」を急ぎ、労働力確保に必死になっています(これはこれで、労働条件など大問題があるけど、今回は触れません)。

労働力不足ということは、雇う側の競争が激しいということです。これが、さまざまな職場で発生している「辞めることができない問題」の根本です。この状況は小泉政権後期から第一次安倍政権で生じていた「やめられない問題」と少し違います。小泉政権下で行われていたのは、新自由主義的労働政策によってどんどん人件費が削られて(非正規労働力の導入と人事考課:成果主義の導入などで給与が抑えられて)、長時間労働が生まれて、そして「もうきつくてダメ」という状況に労働者が置かれたとき、使用者が「やめることはできない」「やめたら損害賠償」などと脅かしていたような「辞められない問題」でした。これは労働者の奴隷化問題とも思えたので、一時期「蟹工船」という奴隷労働ものの戦前小説がヒットしたのです。

ところで、いま生じている労働力不足による「辞められない」は、この新自由主義政策による「蟹工船的」労働者搾り取りというレベルから、また一歩進んでいると思います。

現在の「辞められない」問題は、本当に労働力不足によって生じています。背景には、決定的な要因として日本の人口減があり、さらに主にアジア地域での賃金の上昇(メーカーの国内生産への回帰=いずれロボット化が起きるけど当面は多くの労働力を必要とする)があります。これに、東京オリンピックを控えての現場労働者不足やこの先100年以上人材確保に苦しむであろう福島原発事故処理労働力不足が底辺にあり、これらのことに引きづられてサービス業の販売員不足、窓口サービス人材の不足・・・ばどなどが、まさにドミノ倒し的に生じているのです。

つまり、いまは労働者の立場が(賃金額の問題はあるけど)、雇用契約においては強いのです。そして、使用者(会社とか)はこの関係について弱いから、必死に「辞めたい」人を引き止めます。とくに「辞められる」と自分が困る「管理職」の必死さは異様なものがあります。いずれ、「高プロ」によって、過重労働を今以上に強いられるであろう、この「比較的高所得労働者」ですが、彼、彼女たちは、まだ日本の賃金が全体的に下がっている中では「辞められない」場合が多いといえます(でも、ごく最近は「転職業者・エージェント」の動きが活発化しているようで、この層の「上手く辞めたい問題」が生じているようです)。

このような日本の状況で、「退職代行」については、はっきり言って全く必要ありません。そもそも、退職は期間の定めがない雇用契約は原則的には14日前までに通告すれば自由にできます。1ヶ月の期間を定めた契約は1ヶ月前に通知すれば基本はOK。それ以上の有期雇用契約は契約内容によります。

期間に定めのない雇用契約の労働者が辞める場合は、諸々の仕事の引き継ぎなどを考え合わせ(年次有給の消化とか、退職金の計算とかもあります)、多少時期を調整できる場合は、数ヶ月前の退職意思の表明(労働者側からの雇用契約の解約通知ができれば更に問題なく、「円満」に退職できるわけです。

ポイントは、少し余裕を持って、雇用契約内容をよく確かめて(社長や上司が認めなければ辞められないとかいう規則があっても、それは法律に違反するので無効ですが、一応確認しておきます)、キチンと「退職届」を文書で提出することです。

この場合くれぐれも「退職願い」にしてはならないということを押さえたく思います(「退職願い」は「願い」なので、会社の判断を待つという意味合いが出てしまいます)。そして、この「退職届」を会社側が受け取らなかったら、配達証明郵便とか内容証明郵便とか記録の残る形式で代表取締役宛に送付します(これも、上司ではなく代表取締役宛がよいです。ただし、就業規則などに「上司」でもOKとあれば担当する上司でもかまいません)。ネット上では「メールでの届け出で良い」という情報もありますが、メールは雇用契約に関わるような重大な情報に関する管理がどうなっているかわかりにくく、避けた方が良いです(ただし、メールでしか情報の伝達ができないような外資系の企業などはメールで伝えます)。

あとは、働きながらゆっくり私物を片付けて(辞める前に会社からの支給物と私物との区分けははっきりしておきましょう)、届け出通知した日以降は出社しないこと。この最後の日々は有給休暇の消化が可能ならば、有給休暇を消化します(有給休暇は「辞めた後」では使えません)。

こう見てくると「退職代行」はいったい、どうして必要なのかわかりません。「代行」には5万円ほどの「料金」がかかるとの情報もありますが(すべての業者が同じではない)、そもそも、「退職」は労働者と使用者の間の雇用契約の解約に関する話です。本来ならば、正式な代理人になれる弁護士の仕事です(労災ではない病気や事故問題を抱えている場合は労働者の立場に立つ弁護士を代理人とするのは有力な選択肢の一つです)。そうでなければ、単なるアドバイス・仲介ですが、これは法的にはどうか? また司法書士などが関係して文書作成料としての代金が生じるのか?このばあいは、会社が「認めない」と言ったときに、どこまでフォローがなされるのか?

労働組合は、このような退職トラブルは個人加盟方式の合同労組(ユニオン)が扱うことが多くあります。ユニオンの場合は「退職問題」は経営者との交渉なります。その場合はユニオンへの加盟が条件になるのですが(ユニオンの組合員としての退職条件交渉は、未払いになっている時間外労働賃金や諸手当についての支給を使用者=会社求めることがあります)、ユニオンによっては相談のみを受けてくれるところもあります。この場合は基本的相談料は無料です。

ユニオンが、その相談に来た労働者が加入することを視野に入れて相談を受けていると、この相談の結果(会社とのやりとりによって)、使用者=会社が労働者に不利益を与えることは違法(不当労働行為)になります。これは労働組合(その組合員)にのみ与えられている強い権利です。さらに、この労働組合員としての権利は、その労働者が次の会社に入るに当たって、ユニオンで交渉した事実や経過は伝えなくてもよい(逆に使用者は労働者にそのことを聞いてはならない)という法的な保護ともなります。

「退職代行業」って、なに? 

法のもとで労働者は自由に会社を辞めることができます。それなのに、労働者は簡単には会社を「辞められない」という俗説をもとにして、労働者の危機感を煽って仕事にしている? のでなければ良いと思います。

とにかく、退職問題は近くのユニオンに相談を。そこで、相談にもお金がかかるようなことを言われたら、それ、名ばかりユニオン(そういう仕事)なので、次を当たりましょう。

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