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2018年7月30日 (月曜日)

そんなことまで商売に?「退職代行業」に思う。

いま、日本は深刻な人材不足、というかそもそも労働力が不足しているので労働者不足です。だから政府は外国人労働者の「受け入れ」を急ぎ、労働力確保に必死になっています(これはこれで、労働条件など大問題があるけど、今回は触れません)。

労働力不足ということは、雇う側の競争が激しいということです。これが、さまざまな職場で発生している「辞めることができない問題」の根本です。この状況は小泉政権後期から第一次安倍政権で生じていた「やめられない問題」と少し違います。小泉政権下で行われていたのは、新自由主義的労働政策によってどんどん人件費が削られて(非正規労働力の導入と人事考課:成果主義の導入などで給与が抑えられて)、長時間労働が生まれて、そして「もうきつくてダメ」という状況に労働者が置かれたとき、使用者が「やめることはできない」「やめたら損害賠償」などと脅かしていたような「辞められない問題」でした。これは労働者の奴隷化問題とも思えたので、一時期「蟹工船」という奴隷労働ものの戦前小説がヒットしたのです。

ところで、いま生じている労働力不足による「辞められない」は、この新自由主義政策による「蟹工船的」労働者搾り取りというレベルから、また一歩進んでいると思います。

現在の「辞められない」問題は、本当に労働力不足によって生じています。背景には、決定的な要因として日本の人口減があり、さらに主にアジア地域での賃金の上昇(メーカーの国内生産への回帰=いずれロボット化が起きるけど当面は多くの労働力を必要とする)があります。これに、東京オリンピックを控えての現場労働者不足やこの先100年以上人材確保に苦しむであろう福島原発事故処理労働力不足が底辺にあり、これらのことに引きづられてサービス業の販売員不足、窓口サービス人材の不足・・・ばどなどが、まさにドミノ倒し的に生じているのです。

つまり、いまは労働者の立場が(賃金額の問題はあるけど)、雇用契約においては強いのです。そして、使用者(会社とか)はこの関係について弱いから、必死に「辞めたい」人を引き止めます。とくに「辞められる」と自分が困る「管理職」の必死さは異様なものがあります。いずれ、「高プロ」によって、過重労働を今以上に強いられるであろう、この「比較的高所得労働者」ですが、彼、彼女たちは、まだ日本の賃金が全体的に下がっている中では「辞められない」場合が多いといえます(でも、ごく最近は「転職業者・エージェント」の動きが活発化しているようで、この層の「上手く辞めたい問題」が生じているようです)。

このような日本の状況で、「退職代行」については、はっきり言って全く必要ありません。そもそも、退職は期間の定めがない雇用契約は原則的には14日前までに通告すれば自由にできます。1ヶ月の期間を定めた契約は1ヶ月前に通知すれば基本はOK。それ以上の有期雇用契約は契約内容によります。

期間に定めのない雇用契約の労働者が辞める場合は、諸々の仕事の引き継ぎなどを考え合わせ(年次有給の消化とか、退職金の計算とかもあります)、多少時期を調整できる場合は、数ヶ月前の退職意思の表明(労働者側からの雇用契約の解約通知ができれば更に問題なく、「円満」に退職できるわけです。

ポイントは、少し余裕を持って、雇用契約内容をよく確かめて(社長や上司が認めなければ辞められないとかいう規則があっても、それは法律に違反するので無効ですが、一応確認しておきます)、キチンと「退職届」を文書で提出することです。

この場合くれぐれも「退職願い」にしてはならないということを押さえたく思います(「退職願い」は「願い」なので、会社の判断を待つという意味合いが出てしまいます)。そして、この「退職届」を会社側が受け取らなかったら、配達証明郵便とか内容証明郵便とか記録の残る形式で代表取締役宛に送付します(これも、上司ではなく代表取締役宛がよいです。ただし、就業規則などに「上司」でもOKとあれば担当する上司でもかまいません)。ネット上では「メールでの届け出で良い」という情報もありますが、メールは雇用契約に関わるような重大な情報に関する管理がどうなっているかわかりにくく、避けた方が良いです(ただし、メールでしか情報の伝達ができないような外資系の企業などはメールで伝えます)。

あとは、働きながらゆっくり私物を片付けて(辞める前に会社からの支給物と私物との区分けははっきりしておきましょう)、届け出通知した日以降は出社しないこと。この最後の日々は有給休暇の消化が可能ならば、有給休暇を消化します(有給休暇は「辞めた後」では使えません)。

こう見てくると「退職代行」はいったい、どうして必要なのかわかりません。「代行」には5万円ほどの「料金」がかかるとの情報もありますが(すべての業者が同じではない)、そもそも、「退職」は労働者と使用者の間の雇用契約の解約に関する話です。本来ならば、正式な代理人になれる弁護士の仕事です(労災ではない病気や事故問題を抱えている場合は労働者の立場に立つ弁護士を代理人とするのは有力な選択肢の一つです)。そうでなければ、単なるアドバイス・仲介ですが、これは法的にはどうか? また司法書士などが関係して文書作成料としての代金が生じるのか?このばあいは、会社が「認めない」と言ったときに、どこまでフォローがなされるのか?

労働組合は、このような退職トラブルは個人加盟方式の合同労組(ユニオン)が扱うことが多くあります。ユニオンの場合は「退職問題」は経営者との交渉なります。その場合はユニオンへの加盟が条件になるのですが(ユニオンの組合員としての退職条件交渉は、未払いになっている時間外労働賃金や諸手当についての支給を使用者=会社求めることがあります)、ユニオンによっては相談のみを受けてくれるところもあります。この場合は基本的相談料は無料です。

ユニオンが、その相談に来た労働者が加入することを視野に入れて相談を受けていると、この相談の結果(会社とのやりとりによって)、使用者=会社が労働者に不利益を与えることは違法(不当労働行為)になります。これは労働組合(その組合員)にのみ与えられている強い権利です。さらに、この労働組合員としての権利は、その労働者が次の会社に入るに当たって、ユニオンで交渉した事実や経過は伝えなくてもよい(逆に使用者は労働者にそのことを聞いてはならない)という法的な保護ともなります。

「退職代行業」って、なに? 

法のもとで労働者は自由に会社を辞めることができます。それなのに、労働者は簡単には会社を「辞められない」という俗説をもとにして、労働者の危機感を煽って仕事にしている? のでなければ良いと思います。

とにかく、退職問題は近くのユニオンに相談を。そこで、相談にもお金がかかるようなことを言われたら、それ、名ばかりユニオン(そういう仕事)なので、次を当たりましょう。

2016年4月13日 (水曜日)

NU東京の次回土曜相談は4月16日です。

ネットワークユニオン東京の土曜電話労働相談、次回は4月16日です。

相談受付時間は13時~17時。

相談を寄せられる方には、雇用契約書、就業規則などの雇用に関わる文書を手元に置かれて相談電話をかけていただくと効果的です。(そのような文書がなくても、雇用問題の経過をまとめて手元に置いておかれるとよいと思います)

なお、5月1日のメーデー、NU東京は日比谷野外音楽堂で開催される「日比谷メーデー」に参加いたします。

2015年12月21日 (月曜日)

ブラック社労士問題。私たちが経験している消極的なブラック社労士たち。

東海地方に事務所を構えるK社労士が、自身のブログで「社員をうつ病に罹患させる方法」というとんでもないタイトルを掲げて、権利主張を行う社員(K社労士はこれを「モンスター社員」などとの蔑称を用いている)は嫌がらせを行い、うつ病にして会社から追い出せば良い旨の「経営指南」をおこなっていました。日本労働弁護団や過労死問題に取り組む団体、POSSEなどの労働組織が、厚労省にこの社労士の懲戒処分を求めましたが(12月18日)、このニュースは、改めてブラック士業の問題を社会に問うものとなりました。

多くのマスメディアやブログ、SNS上で取り上げられているので改めて、問題を要約することを避けますが(この問題については、NPO法人POSSEの今野晴貴代表の見解と分析がわかりやすいので、ググってみてください)、わが「かわせみ通信」では、私たちが最近遭遇したブラック社労士まがいの社労士の行為についていくつか例を挙げます。

1、解雇問題について、会社(海外で事業展開する設計事務所)と労働組合で交渉している状況で、組合が会社に対して解雇理由を求めたところ(会社の経営悪化が理由と考えられるケース)、出された離職票に「重責解雇」(懲戒解雇に相当)するとしたケース。

 この離職票は会社社労士が作成したとされるが、重責(懲戒)解雇にもかかわらず労基署の承認もなく、かつ「懲戒理由」も本人も組合もはじめて聞くものでした。曰く「仕事が出来なかったから」と・・・・。百歩譲って仕事能力がないとしても「懲戒」はあり得ません。ましてや解雇された本人は、2級建築士であり、外国語も堪能です。この解雇理由はあり得ないのですが、社労士はその離職票をいきなり作成したのでした。

 この問題のバックにはブラックならぬ労働事件について知識のない弁護士がついていました。この弁護士たちは、自分たちのデタラメを覆い隠すために、社労士会に抗議し、弁護士会に懲戒請求を起こした私たちに(事実無根の)「損害請求訴訟」まで起こしました。まさに嫌がらせ訴訟です。そしてこの段階で、彼らは完全にブラックになりました。

 訴訟では私たち労組側が勝利し、そして離職票問題も解決しましたが(ハローワークがそのような離職票を受け取ったこと自体を間違いと認めた)、その結末は・・・。会社は一連の裁判や争議に耐えきれずに倒産してしまったのです。

 無知な社労士や弁護士が、自ら事件を引き起こして、そして結局は会社が全面的に敗北しさらには経営の破綻まで起こしたケースです。

2、特定社労士でもない社労士が労使交渉に介入して、問題を複雑化させたケース。

 神奈川の学習塾(ブラック業界と言われていますが)で、ハラスメントと過重労働で就労困難になった労働者の問題について、会社側と組合が交渉をしている状況で、会社側社労士(特定社労士ではない)が、一方的に当該労働者を解雇しながらも離職票を送らず、また解雇予告手当も支給しないという手段を取りました(傷病手当についての知識も極めて怪しいものでした)。

 加えて、この社労士は特定社労士でないにもかかわらず団体交渉に登場し、会社側の発言について「法的に問題がない」(不当労働行為発言など言い放題の会社ですが)「法律でそうなっている」などと発言しつづけました。さらに、団体交渉に必要な労働条件に関する資料の提示を「必要ない」などと、何の権限も責任もなく発言し、交渉の成立を困難にしました。

 このケースの場合、組合は社労士の所属する社労士会に業務監査を求めました。またこの問題については労働審判で(時間外賃金未払い問題含め)組合側が勝利的に解決しました。このような社労士は、会社の違法を追認するためだけの役割を果たした、消極的なブラック社労士といえます。

3、労使交渉のさなかに、雇い止め通知を「書かされた」社労士。

 東京の半導体関連製造業で高年法による雇用延長をめぐって、労使交渉で再雇用後の労働条件を労使間で交渉してるときに、会社側は一方的に組合との交渉で合意がなかったので再雇用をしないとし、「自己都合による退職」との離職票を当該労働者に渡したケース。

 解雇は不当としても明らかに会社都合であるのに「自己都合」したのは、会社の社労士であると判明。社労士には強く抗議したところ、社労士はそもそも本件問題に関しての知識がほとんどなく、会社側弁護士(経営法曹会議所属の比較的若い弁護士)の指示によるものとしました。

 会社は、このほかにも時間外賃金を一切払わず。会社側弁護士労使交渉において、労基署への相談を組合が語ると「そのようなことをすると、今後交渉は持てない」「(組合の役員について)もう辞めたらどうか」など違法発言(労基法違反や労働組合法違反)を行う始末です。

 現在、再雇用については争議状態になっていますが、労基署の指導の下で未払い時間外賃金の一部が支給されました。

 以上、3つのケースは、私たちがこの数年間に経験したケースです。個々に登場する社労士たちは基本的には「無知」であり「違法企業の言いなり」に動いています。このような社労士は「消極的なブラック」といえます。

(カワセミ)

2015年12月15日 (火曜日)

個人加盟労組ということの意味(その2-「個人」の変化1)

日本における合同労組の結成は、戦前は左翼的イデオロギーのもとで、そして戦後はGHQの戦後民主化政策と総評の「中小対策オルグ」配置によって進められてきました。

ここでいう合同労組は、職場組織を作ること、あるいは職場組織単位の活動を前提としての合同労組です。この合同労組の形成と運営には、その地域や産業(産別)に対応して配置されたオルグ(オルガナイザー:労働組合の組織者)が当たりました。

戦後(とくに1950年代から70年代)は、大企業労組ではカバーできない中小企業の労働者の組織化のために、オルグが地域に張り付いて、文字通り労働者を一人ひとり合同労組にオルグして、そしてその企業で一定の影響力を行使できる段階になると職場組織を「公然化」(組合作りが経営側に知られると、その切り崩しが行われるために、職場組織の結成通告までは、経営側に知られないように組合を準備する)しました。公然化後は同じ地域や同じ業種の労働組合の力を借りて、労働者の要求実現のために活動する形になります。

この、戦前・戦後タイプの合同労組(以後、「合同労組オリジナル」とします)とはあくまでも職場組織を前提とした合同労組なのです。この場合の「個人加盟」とは、労働組合を準備するための地域合同労組などへの個人加盟であり、その職場組合組織が結成された以降は、その職場組織の上部団体への個人加盟ということになることが多かったのです(組合結成後に、その合同労組が「企業内組合」化して、合同労組から離れてしまう場合は、その企業内労組への個人加盟となります)。

ところで、昨今の個人加盟労働組合(地域ユニオンや課題別ユニオン=これを仮に「ユニオンタイプ」とします)の場合、「個人加盟」の意味合いが「合同労組オリジナル」とはかなり性格が違います。

「ユニオンタイプ」では、「合同労組オリジナル」のように、オルガナイザーが地域でビラを配ったり、職場近くの労働者のたまり場(職場近くの居酒屋とか、地域の文化・スポーツサークルとか)で顔見知りになったりした労働者をオルグ(組合へ勧誘して)して加入させる、という経過をとらないことが多いのです。どのような形をとるかと言えば、ホームページやブログあるいはSNSなどのWEB情報、マスメディアの報道などによって、個別労働問題(解雇や退職勧奨やハラスメント、病気休職問題など)の相談や解決を求めて、個人労働者の方から労働組合に接触をしてくるのです。そして、ユニオンはこの相談に対応する中で、その相談に来た個人の問題の解決について、雇用主に対して団体交渉を申し入れます。「合同労組オリジナル」タイプでの公然化は、ユニオンタイプではいわば「ひとり公然化」として行われることが多いのです(ただし、オリジナルタイプの伝統を持つ「合同労組」は現在でも、一定の組合員が揃うまでは公然化しないことがあります)。

労働相談から、短期間のうちに労働組合に加入して、個人組合員の労働条件や労働環境について団結権と団交権を行使する。これがユニオンタイプの活動の特徴で、だから、ユニオンタイプは完全個人型合同労組ともいえます。

このオリジナルタイプからユニオンタイプへの「個人加盟」の変化にはそれなりの背景があると考えられます。詳しくは次回以降に考えたく思いますが、変化の背景として次のようなことが挙げられます。

1、労働組合の企業内化:企業別組合が企業内の労働管理部門的な役割になってしまい、地域の労働者の生活や権利について関心がなくなったこと(とくに、産業別大企業労組は無関心)

2、産業構造の変化:戦前・戦後の労働集約型で工業中心の「職場」から商業、金融、サービス業中心となり(1980年代が変わり目)、労働形態、就業状況が大きく変化したこと

3、一つの職場に働く労働者の居住地が多様化し、かつ遠隔地化したこと、あるいは個々人の思考の多様化によって、同じ職場に働く人が集まる場が少なくなった(社員旅行の中止などは象徴的)こと

4、情報処理手段の変化(IT革命以降)によって、一つの職場に働く人たちの情報交換の形態が大きく変わったこと

5、労働者一人一人の保有する情報量が桁違いに大きくなった(PCのHDD、あるいはデータ記憶媒体の中には、一人の人間が一生かけても読み切れないほどのデータが有り、また、個人が利用できるWEB上のデータは(労働分野に限っても)無限と思われるほどである、ということ

6、情報の横溢に反して、個人情報の保護や企業情報の秘密管理については厳格化されていて、特定の「他者」(隣で働いている人とか)の情報が得られにくい社会になっていること

以上の他にもまだあると思いますが、仕事と個人のあり方が数十年間の間に大きく変化した日本において、合同労組の活動スタイルや、個人加盟労組における「個人」の位置づけも大きく変化してきたのです。

(つづく)

カワセミ

2015年12月 8日 (火曜日)

個人加盟労組ということの意味(大げさに言えば歴史的変遷 その1)

私たちNU東京は、個人加盟方式のユニオン(労働組合)です。

しかし、考えてみれば、個人加盟でない労働組合などというものは存在するのでしょうか?

1)合同労組が、その加盟単位を職場労組組織とすれば、個人加盟でない

2)もしかしたら、会社に入ったら加盟することになっている企業内組合は個人加盟でない?

2)の場合は、やはり個人加盟です。形としては、まず企業内労働組合に、その企業の従業員として採用された個人が加入して、そして、その企業内組合に加入したことではじめて、その人が採用され得るのです。これをユニオンショップ制といいます。

ユニオンショップは、会社(雇用主)とその会社の労働組合が労働協約(労働組合と会社が取り結ぶ協定で、これは就業規則や労使協定よりも優先します)を結び、そのユニオンショップ協定を結んでいる労働組合の組合員でなければ社員として採用しないことになっているのです。要するに労働組合員であることが社員の条件になるのです。

このユニオンショップ協定においては、その対象を正社員の非管理職とする場合が多くありますが、その場合はパートやアルバイト、あるいは契約社員などの「非正規」従業員や管理職採用された従業員はユニオンショップの対象から外れます。

管理職をユニオンショップの対象(あるいは労働組合員の対象)から外すというのは、元々は。管理職を通しての労働組合への支配介入行為を防止するための手段であったので、それなりに納得できる面があります。しかし、「非正規」従業員を対象から外すのはどうか? ここは大いに議論が生じるところです。

話を戻します。とにかく、ユニオンショップは個人加盟の形式をとります(ユニオンショップ問題については今後触れていきます)。

で、つまり組織単位加盟による地域合同労組以外の労働組合は全て個人加盟労働組合なのです。

しかし、多くのユニオンは「個人加盟労働組合」「個人でも加盟できるユニオン」ということを前面に出して活動しています。私たちNU東京も、そう言えるかも・・・・

もう少し整理します。

実際は、個々人が加盟する労働組合(ユニオン)でも、その活動においては個人が単位にならないことがあります。それが職場組織です。○○ユニオン(○○労働組合)○○支部あるいは○○分会という形で、活動単位が支部あるいは分会とされている個人加盟ユニオンは多くあります。この場合、一人しかその会社・職場に組合員が存在しない場合、どうするのか?これまた、いくつかのケースがあって、

1)その職場に一人しか組合員がいなくても支部あるいは分会名を名乗る(そして全従業員の労働条件について要求を提示して堂々と労使間交渉を持っていく)

2)特定の地域に存在する職場に一人の組合員を集めて、その地域ごとの支部・分会を形成して、その支部・分会として組合員が存在する各企業の労働条件等について交渉していく)

3)はじめから、一人一人の組合員を組織単位として、その一人一人が働く職場での労働条件などについて、合同労組(ユニオン)が経営と交渉していく

となります。

1)と2)は、いわば古くからの合同労組のスタイルで、全国一般労働組合とか全統一労働組合は、この形を取ることが多く、3)はいわゆる「ユニオン型」で、その典型的なのが「管理職ユニオン」や「女性ユニオン」など、職場の結びつきというよりも労働者の地位・性別などの属性による労働組合です。「ユニオン型」(と仮にします)の合同労組の場合、個々人が直面している雇用問題をストレートに扱います。また、解雇・退職勧奨や休職問題、病気や職場いじめなどの個々人に関わる問題に対応しやすいという特質がある半面、企業・職場全体の雇用条件や労働環境問題には一工夫が必要(個人の持つ情報の限界もあり)という面があります。

当然、どの形式の労働組合、合同労組でも、労働三権(団結権、団交権、団体行動権=労働争議権)という、憲法28条のもとに活動できます。

つづく

(かわせみ)

2015年11月24日 (火曜日)

私たちの組合(ユニオン)のこと ☆その2 私たちのルーツ

私たちの組合(労働組合ネットワークユニオン東京/NU東京)、は1998年2月27日に結成されました。当時の本部は板橋区の板橋1丁目。中山道沿いにありました。そして、その場所は「東京管理職ユニオン」の事務所でもありました。

私たちNU東京は、東京管理職ユニオン(当時の正式名称は全労協全国一般東京労働組合管理職ユニオン、現在その運動は、東京管理職ユニオン、東京統一管理職ユニオン、管理職ユニオン・関西に分かれながらも、それぞれの組織が引き継いでいます)の活動の中から生まれた組織なのです。

1993年12月に東京管理職ユニオンは労働組合に入れないといわれていた、管理職が一人でも加入できる労働組合として、やはり個人でも加入できる合同労働組合である「全労協全国一般東京労働組合(東京労組)」の一組織として結成されました(後、東京労組から独立)。そして、東京管理職ユニオンは、管理職が直面する労働問題とともに1990年代中期、日本に吹き荒れたリストラの嵐の中で強まっていた、職場いじめ問題やメンタルヘルス問題にも積極的に取り組み、「職場いじめ問題」「リストラ部屋問題」「過重労働によるメンタル問題」などを社会に提起しました。

このような、管理職ユニオンの多様な活動の中、管理職ユニオンには、管理職でない労働者も多く加入することになり(20数年前の当時は、まだ職場いじめ・嫌がらせ問題や、職場でのメンタルヘルス問題を取り上げる労働組合は数少なかったのです)、そして、これら管理職ユニオンに加入した「非管理職」労働者のためのユニオンを結成する必要が生まれたのです。

以上のような経過で、私たちNU東京は結成され、そして、結成以降は(全国の)嫌がらせ問題やメンタルヘルス問題に対応するようになり、結成直後から「倒産・リストラホットライン」「若者トラブル・ホットライン」などを必要に応じて開設し、その活動は多くのマスメディアも取り上げるようになりました。

やがて、管理職ユニオン・関西が西日本の「非管理職」のいじめ問題に取り組むようになり、また全国各地の地域ユニオンも積極的に職場いじめ問題やメンタルヘルス問題に取り組むようになったために、現在のように東京地域(とくに隅田川の東側の23区地域)の地域合同労組として、渋谷区の事務所で活動を行うようになりました。(途中1999年夏から2002年3月までは西新宿に事務所がありました)

以上が、私たちの組織の来歴です。整理すると旧総評全国一般労働組合東京地本北部が基になって形作られた「全国一般東京労組」を源流とし、東京管理職ユニオンを「親」にして形作られ、そして現在は独自の(小さいけれども)個人加盟地域合同労組/ユニオンとして、東京渋谷区に本部をもって活動しているのが、私たちNU東京です。

次回は、全国一般系の合同労組の特徴などについて記事をアップしたいと思います。

かわせみ

(続く)

2013年3月18日 (月曜日)

安倍政権の賃上げ政策は内実がない。効果的な賃上げは最低賃金の大幅引き上げと、ただ働きの根絶。

安倍政権は、労働者の給与を上げるとしているが、実際には全くその感がない。

マスメディアは自動車大手メーカーや大手コンビニ業で賃上げがあると報じていますが。アベノミクスで大儲けしそうな自動車産業はさておき、コンビニ業界の賃上げもかなり怪しく思えます。

まず、賃上げは「賞与」についてというところが多く、この「賞与」なるものの査定が以下に実施され、それがどのように実際の賃上げになるかが不明です。

それに、今回「賃上げ」するとした多くの企業の賃上げ対象者は「正社員」であり、各企業とも「非正規」社員を大幅に増やしているので、実際は職場で賃上げ対象者が何人なのか?ということもあり、さらに同じ職場で働いている(コンビニも)同じユニフォームを着た人でも、実は会社が違う人もいるわけですから、コンビニ業界の「賃上げ」など、かなり「名ばかり賃上げ」と言えるのではないか?と思われます。

私たちが日常受けている相談でも、賃下げ、解雇、正社員から契約社員への変更、契約社員からアルバイトへの変更、そしてそれとともに行われる退職勧奨という相談が目立ちます。

いったいどこに「賃上げ」の現場があるのか? 

きっと安倍政権は、一定程度「大企業」の「正社員」の賃上げが落ち着いた段階で、大企業正社員の平均賃上げ率などを出して、「確かに賃上げがあった」などと政策の実現をアピールするのだと思いますが、それはごまかし統計もので全く信じるに足りません。

ところで、もっとも手っ取り早くて、しかも全業種、全企業規模にわたる実質的な賃上げの方法は、サービス残業の廃止(当然、時間外労働はすべて法にかなった割増賃金を支払う)。そして最低賃金の大幅な引き上げです。また、年次有給休暇の取得率の向上も雇用を生み出します。

要は、労働政策を見直すことです。これは残業代未払い法(ホワイトカラーエクゼンプション)の導入を過去に図り(失敗した)、また正社員の解雇自由を検討する安倍自民党政権には荷が重すぎると思いますが、賃上げを政策として打ち出した以上、そのくらいのことはやらねばなりません。

このままゆくと、2%の政策インフレが強行されるなかで、賃金のみが目減りするという最悪な状況にいたります。そして社会には不満が醸成され、蓄えられていくことになります。

そして、矛盾だらけの政治的経済対応の「アベノミクス」が破綻し、賃金が実質目減りする事態が訪れたとき、安倍政権(あるいはその後の政権)がとる策は、改憲のうえ「強靱な国家」を前面に出し、た軍拡・強権策になるのでしょうか? それこそ日本破滅のシナリオです。

政府の掛け声ややマスメディアの報道とは大きく隔たりがある労働現場の声を、日々の労働相談で受けながら、本当に心配になります。

2013年3月 7日 (木曜日)

NU東京の15年間の相談結果から(その1、IT労働者)

以下の文は、NU東京の機関紙である「おれんじ」165号(本年3月1日号)に掲載された記事を基にしています。

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NU東京が15年間に受けた労働相談データを基にして、「日本の労働者」(少し大げさ)の状況を考えてみたく思います。

NU東京にはIT労働相談が多い?

  NU東京の特徴として、組合員にいわゆるIT関連の労働者が多いということがあります。2013年3月1日現在で、NU東京の支部・分会組織を持たない組合員の37%がIT労働者です。ライジングサン支部、帝産東整労、VAN分会の「非IT部門労働者」を加えた全組合員中でも25%を占めます。たしかに多い?

 2012年1年間に、NU東京に寄せられた労働相談件数は352件でした。そのうちIT関連労働者からの相談が48件なので、相談におけるIT労働者比率は14%ということになります。
 NU東京に寄せられる相談(ホットライン開設時の相談を除くもので、カルテが作成された相談)のうちIT労働者からの相談は15年間を通じて14%(3707件中519件)という結果が出ています。つまり相談受付件数では全体の14%であるIT労働者が組合員の37%を占めているのです。これはNU東京へのIT労働者の加入比率が高いのか?あるいは加入後の脱退率が低いのか? いずれ詳しく分析してみたく思います。

かつては時代の寵児

 では、IT労働者はどのように状況に置かれているのでしょうか?
 NU東京が結成されたのは1998年2月27日でした。日本の産業構造が製造業中心から非製造業(流通、金融、サービス、情報)に大きく変わろうとしているまさにその時代に、時代の寵児のように登場したのが「IT労働者」です。1998年、海の向こうではまさにITバブルが開花しようとしており、日本では「2000年問題」の解決に向けてIT労働者の不足が嘆かれていました。2000年には自民党政権の森首相による「イット(IT)」発言もありましたが、時代はIT労働者にとって前途洋々たるもの、のはずでした。
 1998年にNU東京に相談を寄せたIT労働者のうち、年収額が確認できている労働者6名(相談件数13名)のうち、特殊な1名(IT技術がないのに入社して、すぐに減給された労働者で年収は200万円)を除く5名の平均年収は640万円と比較的高額でした。

過酷な労働環境下のIT労働

 ところが、それから15年。IT労働者の賃金は下がり続け、労働環境も悪化し続けています。常に新しい知識と技術を求められ、同時に毎年大量のあらたなIT労働者が労働力市場に投入される現在、多くのIT労働者は大企業の2次、3次下請け、さらにその下請けで低賃金で働く、まさに「IT蟹工船」状態に置かれています。
 2012年にIT労働者から寄せられた48件の相談のうち年収がわかる相談は26件で平均年収は450万円でしたが、250万円に届かないIT労働者からの相談が6件ありました。また、年収で600万円程度のIT労働者でも、1ヶ月の時間外労働時間が常に150時間を超える労働者もいます(時間外賃金をキチンと計算し、週40時間労働に換算すると年収300万円以下になります)。IT労働者のおかれている状況は過酷といえます。

2013年2月27日 (水曜日)

NU東京結成15周年の日に、思いつくまま書きます。

わたしたちNU東京は、1998年2月27日に結成されました(当時の本部所在地は板橋区)。ということで、気がつけば今日は結成15周年の記念日です。

この15年間に私たちが受けた労働相談件数は1万件を超えます。寄せられる相談のテーマは解雇、退職勧奨・退職強要、ハラスメント・嫌がらせ、出向・転籍、降格・減給、賃金(残業代含む)未払い、遅配・欠配、病気・休職そして労働組合作りと、ほぼ変わりませんが、その内容は深刻化しています。

まず、賃金が大幅にダウンしています。IT労働者の時間あたり換算の賃金は、ほぼ半減したといって良いと思います。加えて労働密度が高まり、過重労働となり、これによる病気休職の相談が多くなってきました。

この15年間は、日本における製造業従事者が減少した15年間でもあります。NU東京結成時の1998年は、日本がバブル経済の傷を負いながら製造業主体から非製造業主体の産業構造へと大きく動き出したときでした。1990年代半ばに日本は非製造業社会に舵を大きく切りました。そして「正社員」中心から「非正規労働者」の大量採用へと大きく動きました。このような労働者を取り巻く環境の大変化は労働者を個々バラバラに経営者と向き合わさせ、形だけの「労使間の自由な契約」のもとで、労働者に不利な労働条件を押しつけ、そして労働者の生活は苦しくなる一方なのに、日本は「いざなみ景気」(戦後最長の「いざなぎ景気」並の好景気)を生み出したのでした。いつの間にか大企業の「内部留保金」が数百兆円にもなるという、格差と富の偏在が生じていました。

この富の偏在と社会的不幸へが、誰の目にも明らかになったときに(安倍第一次内閣が残業代は払わなくて良いなどという法律を作ろうとしたことを忘れてはなりません)、自民党政権は崩壊し、民主党中心政権が(短命ですが)生まれました。

15年の間に、さらに二つの大きなことが起きました。

一つは2008年9月の「リーマンショック」であり、これは市場原理主義と「経済学」の破綻を印象づけました。

もう一つは2011年3月11日の東日本大震災と引き続き起きた福島原発の爆発事故です。これは、政府が長年続けてきた原発行政のデタラメさを一気に明らかにしました。

この二つの事態は、私たちに世界のあり方と日本のあり方を根本的に問い直す必要を感じさせました。それはまた、日本の社会のあり方を問うものでした。

しかし、日本の労働組合活動は、このような大事なときに停滞し続けています。

その大きな原因は企業別の(企業と一体になった)労働組合のあり方があります。また、製造業の従事者が1000万人を切るまでになっているのに、労働運動の形は未だに「重厚長大」で、個々人がバラバラになって働いている、日本の現状と乖離してしまっています。日本の労働運動の作り直しも必要だと思います。

長々と書いてしまいました。

とにかくNU東京結成15周年です。

といっても、特に記念イベントはなし。ただ、私たちは日頃の活動を淡々と続け、その活動の中から新しい労働運動の形を模索するのみです。

(かわせみ)

2013年2月25日 (月曜日)

3月7日(木)~9日(土)に、関西地域で「年度末! 解雇・雇止めホットライン」開設。

派遣パートユニオン・関西と管理職ユニオン関西の共催による労働相談ホットライン、「年度末!解雇・雇止めホットライン」(労働相談ホットライン)が、3月7日(木)~9日(土)の3日間10時~18時の時間帯で開設されます。

次第は以下の通りです。

日時:2013年3月7日(木)~9日(土)の10時~18時

ホットライン電話番号

 大阪 06-6881-0781/0110

 神戸 078-360-0450

主催:派遣パートユニオン・関西/管理職ユニオン・関西

↓開催主旨は以下のサイトへ。

http://www.ahp-union.or.jp/hotline130307.pdf

☆東京地区の年度末雇止め/解雇相談は、NU東京へ

03-5363-1091 受付時間12時~19時(平日のみ)

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