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2015年12月21日 (月曜日)

ブラック社労士問題。私たちが経験している消極的なブラック社労士たち。

東海地方に事務所を構えるK社労士が、自身のブログで「社員をうつ病に罹患させる方法」というとんでもないタイトルを掲げて、権利主張を行う社員(K社労士はこれを「モンスター社員」などとの蔑称を用いている)は嫌がらせを行い、うつ病にして会社から追い出せば良い旨の「経営指南」をおこなっていました。日本労働弁護団や過労死問題に取り組む団体、POSSEなどの労働組織が、厚労省にこの社労士の懲戒処分を求めましたが(12月18日)、このニュースは、改めてブラック士業の問題を社会に問うものとなりました。

多くのマスメディアやブログ、SNS上で取り上げられているので改めて、問題を要約することを避けますが(この問題については、NPO法人POSSEの今野晴貴代表の見解と分析がわかりやすいので、ググってみてください)、わが「かわせみ通信」では、私たちが最近遭遇したブラック社労士まがいの社労士の行為についていくつか例を挙げます。

1、解雇問題について、会社(海外で事業展開する設計事務所)と労働組合で交渉している状況で、組合が会社に対して解雇理由を求めたところ(会社の経営悪化が理由と考えられるケース)、出された離職票に「重責解雇」(懲戒解雇に相当)するとしたケース。

 この離職票は会社社労士が作成したとされるが、重責(懲戒)解雇にもかかわらず労基署の承認もなく、かつ「懲戒理由」も本人も組合もはじめて聞くものでした。曰く「仕事が出来なかったから」と・・・・。百歩譲って仕事能力がないとしても「懲戒」はあり得ません。ましてや解雇された本人は、2級建築士であり、外国語も堪能です。この解雇理由はあり得ないのですが、社労士はその離職票をいきなり作成したのでした。

 この問題のバックにはブラックならぬ労働事件について知識のない弁護士がついていました。この弁護士たちは、自分たちのデタラメを覆い隠すために、社労士会に抗議し、弁護士会に懲戒請求を起こした私たちに(事実無根の)「損害請求訴訟」まで起こしました。まさに嫌がらせ訴訟です。そしてこの段階で、彼らは完全にブラックになりました。

 訴訟では私たち労組側が勝利し、そして離職票問題も解決しましたが(ハローワークがそのような離職票を受け取ったこと自体を間違いと認めた)、その結末は・・・。会社は一連の裁判や争議に耐えきれずに倒産してしまったのです。

 無知な社労士や弁護士が、自ら事件を引き起こして、そして結局は会社が全面的に敗北しさらには経営の破綻まで起こしたケースです。

2、特定社労士でもない社労士が労使交渉に介入して、問題を複雑化させたケース。

 神奈川の学習塾(ブラック業界と言われていますが)で、ハラスメントと過重労働で就労困難になった労働者の問題について、会社側と組合が交渉をしている状況で、会社側社労士(特定社労士ではない)が、一方的に当該労働者を解雇しながらも離職票を送らず、また解雇予告手当も支給しないという手段を取りました(傷病手当についての知識も極めて怪しいものでした)。

 加えて、この社労士は特定社労士でないにもかかわらず団体交渉に登場し、会社側の発言について「法的に問題がない」(不当労働行為発言など言い放題の会社ですが)「法律でそうなっている」などと発言しつづけました。さらに、団体交渉に必要な労働条件に関する資料の提示を「必要ない」などと、何の権限も責任もなく発言し、交渉の成立を困難にしました。

 このケースの場合、組合は社労士の所属する社労士会に業務監査を求めました。またこの問題については労働審判で(時間外賃金未払い問題含め)組合側が勝利的に解決しました。このような社労士は、会社の違法を追認するためだけの役割を果たした、消極的なブラック社労士といえます。

3、労使交渉のさなかに、雇い止め通知を「書かされた」社労士。

 東京の半導体関連製造業で高年法による雇用延長をめぐって、労使交渉で再雇用後の労働条件を労使間で交渉してるときに、会社側は一方的に組合との交渉で合意がなかったので再雇用をしないとし、「自己都合による退職」との離職票を当該労働者に渡したケース。

 解雇は不当としても明らかに会社都合であるのに「自己都合」したのは、会社の社労士であると判明。社労士には強く抗議したところ、社労士はそもそも本件問題に関しての知識がほとんどなく、会社側弁護士(経営法曹会議所属の比較的若い弁護士)の指示によるものとしました。

 会社は、このほかにも時間外賃金を一切払わず。会社側弁護士労使交渉において、労基署への相談を組合が語ると「そのようなことをすると、今後交渉は持てない」「(組合の役員について)もう辞めたらどうか」など違法発言(労基法違反や労働組合法違反)を行う始末です。

 現在、再雇用については争議状態になっていますが、労基署の指導の下で未払い時間外賃金の一部が支給されました。

 以上、3つのケースは、私たちがこの数年間に経験したケースです。個々に登場する社労士たちは基本的には「無知」であり「違法企業の言いなり」に動いています。このような社労士は「消極的なブラック」といえます。

(カワセミ)

2013年2月 6日 (水曜日)

不正・不法に対する会社・団体「組織内」での内部告発は、もみ消しにつながりかねない。

女子柔道日本代表監督による選手に対する暴力「指導」問題は、日本のスポーツ界の陰の部分を浮きだたせています。この問題について全柔連もJOC(日本オリンピック委員会)も問題のもみ消しをはかってきていますが、組織内の問題を、その組織内で処理しようとする場合、「隠蔽」「もみ消し」に組織が動くという良い例だと思います。

いま、ちょっとした企業には「コンプライアンス対策室」とか「内部通報窓口」などが設けられていますが、それはあくまでも企業内・組織内のネガティブな情報が企業・組織外に明らかにされる前に処理するためのシステムで、その「処理」はあくまでも企業・組織の利害に照らし合わせてなされます。良くて、コンプライアンスが企業業績にアップに如何につながるかなどとの駄文すら作ります。

だから、上層部の根幹に関わる問題とか、組織の構造的な問題には対処できず、結局は不正・不法を問題にした告発者や、企業・団体の被害者の立場は第二義的になります。

オリンパスでの内部告発問題はその典型と思えますが(相撲協会の問題などは最悪でした)、柔道女子代表への暴行問題は全柔連・JOCの利害に加えて、さらに東京オリンピック誘致の利害まで絡んできています。

しかし、基本は不法・不正であり、被害者の立場であるはずです。改めるべきは企業・団体の不正・不法を生むシステムでなければなりません。(困ったことに、この不法・不正を生むシステムに時として企業内労働組合やその職場組織が荷担していることです。オリンパスや東電など企業内労組の役割とは何でしょうか?)

JOCともなると天下り問題や派閥問題も絡み、企業・団体の側から問題を見ようとすると事態はより複雑に「見えて」ます。しかし、内部告発者や被害者の側から見れば、問題は単純です。要は不正・不法を摘発してただせばよいのです。

このような文書を書いているところに、1件の相談がありました。某企業でのハラスメント問題。被害者の当事者が会社組織の苦情処理方法に従って、この問題を解決しようとしたところ、逆に告発内容と告発者の実名を企業が企業内全体に公表し、被害者を精神的に追い詰め、一方で加害者である管理職は放置という事案です。日本という国はオリンピック委員会から民間企業まで、基本的な法令遵守精神が無いようです。

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