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2015年12月15日 (火曜日)

個人加盟労組ということの意味(その2-「個人」の変化1)

日本における合同労組の結成は、戦前は左翼的イデオロギーのもとで、そして戦後はGHQの戦後民主化政策と総評の「中小対策オルグ」配置によって進められてきました。

ここでいう合同労組は、職場組織を作ること、あるいは職場組織単位の活動を前提としての合同労組です。この合同労組の形成と運営には、その地域や産業(産別)に対応して配置されたオルグ(オルガナイザー:労働組合の組織者)が当たりました。

戦後(とくに1950年代から70年代)は、大企業労組ではカバーできない中小企業の労働者の組織化のために、オルグが地域に張り付いて、文字通り労働者を一人ひとり合同労組にオルグして、そしてその企業で一定の影響力を行使できる段階になると職場組織を「公然化」(組合作りが経営側に知られると、その切り崩しが行われるために、職場組織の結成通告までは、経営側に知られないように組合を準備する)しました。公然化後は同じ地域や同じ業種の労働組合の力を借りて、労働者の要求実現のために活動する形になります。

この、戦前・戦後タイプの合同労組(以後、「合同労組オリジナル」とします)とはあくまでも職場組織を前提とした合同労組なのです。この場合の「個人加盟」とは、労働組合を準備するための地域合同労組などへの個人加盟であり、その職場組合組織が結成された以降は、その職場組織の上部団体への個人加盟ということになることが多かったのです(組合結成後に、その合同労組が「企業内組合」化して、合同労組から離れてしまう場合は、その企業内労組への個人加盟となります)。

ところで、昨今の個人加盟労働組合(地域ユニオンや課題別ユニオン=これを仮に「ユニオンタイプ」とします)の場合、「個人加盟」の意味合いが「合同労組オリジナル」とはかなり性格が違います。

「ユニオンタイプ」では、「合同労組オリジナル」のように、オルガナイザーが地域でビラを配ったり、職場近くの労働者のたまり場(職場近くの居酒屋とか、地域の文化・スポーツサークルとか)で顔見知りになったりした労働者をオルグ(組合へ勧誘して)して加入させる、という経過をとらないことが多いのです。どのような形をとるかと言えば、ホームページやブログあるいはSNSなどのWEB情報、マスメディアの報道などによって、個別労働問題(解雇や退職勧奨やハラスメント、病気休職問題など)の相談や解決を求めて、個人労働者の方から労働組合に接触をしてくるのです。そして、ユニオンはこの相談に対応する中で、その相談に来た個人の問題の解決について、雇用主に対して団体交渉を申し入れます。「合同労組オリジナル」タイプでの公然化は、ユニオンタイプではいわば「ひとり公然化」として行われることが多いのです(ただし、オリジナルタイプの伝統を持つ「合同労組」は現在でも、一定の組合員が揃うまでは公然化しないことがあります)。

労働相談から、短期間のうちに労働組合に加入して、個人組合員の労働条件や労働環境について団結権と団交権を行使する。これがユニオンタイプの活動の特徴で、だから、ユニオンタイプは完全個人型合同労組ともいえます。

このオリジナルタイプからユニオンタイプへの「個人加盟」の変化にはそれなりの背景があると考えられます。詳しくは次回以降に考えたく思いますが、変化の背景として次のようなことが挙げられます。

1、労働組合の企業内化:企業別組合が企業内の労働管理部門的な役割になってしまい、地域の労働者の生活や権利について関心がなくなったこと(とくに、産業別大企業労組は無関心)

2、産業構造の変化:戦前・戦後の労働集約型で工業中心の「職場」から商業、金融、サービス業中心となり(1980年代が変わり目)、労働形態、就業状況が大きく変化したこと

3、一つの職場に働く労働者の居住地が多様化し、かつ遠隔地化したこと、あるいは個々人の思考の多様化によって、同じ職場に働く人が集まる場が少なくなった(社員旅行の中止などは象徴的)こと

4、情報処理手段の変化(IT革命以降)によって、一つの職場に働く人たちの情報交換の形態が大きく変わったこと

5、労働者一人一人の保有する情報量が桁違いに大きくなった(PCのHDD、あるいはデータ記憶媒体の中には、一人の人間が一生かけても読み切れないほどのデータが有り、また、個人が利用できるWEB上のデータは(労働分野に限っても)無限と思われるほどである、ということ

6、情報の横溢に反して、個人情報の保護や企業情報の秘密管理については厳格化されていて、特定の「他者」(隣で働いている人とか)の情報が得られにくい社会になっていること

以上の他にもまだあると思いますが、仕事と個人のあり方が数十年間の間に大きく変化した日本において、合同労組の活動スタイルや、個人加盟労組における「個人」の位置づけも大きく変化してきたのです。

(つづく)

カワセミ

2015年11月17日 (火曜日)

私たちの組合(ユニオン)のこと ☆その1

このブログを始めてから、私たちの組合(ユニオン)のことについて、取り上げていないことに気がつきました。「別に開いているホームページをみてもらう」という意識があったためだと思いますが、それでも、やはり「自己紹介」は必要です。

ということで、これから数回は私たちの組合(ユニオン)の自己紹介と結成にいたる経過、活動の特徴などについて書いていきたく思います。

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私たちの組合(ユニオン)の名称は

労働組合ネットワークユニオン東京といいます。本部は東京都渋谷区千駄ヶ谷5-15-13にあります。

略称は「NU東京」です。

結成年月日は1998年2月27日。当時の所在地は板橋区(板橋駅と新板橋駅と下板橋駅の真ん中あたり)でした。

私たちの組合はいわゆる「個人加盟方式の合同労働組合」です。

☆合同労働組合とは

合同労働組合とは、いくつかの組合が集まって一つの組合を形成するという組織形態を持ちます。たとえば、板橋区にあるA産業の組合、B商店にある組合、C興業にある組合などなど、各企業ごとに作られた組合を一つの組織として、企業の外に本部を持つ労働組合として活動するスタイル。これを合同労働組合といいます。このようにして作られた合同労働組合は、たとえばその組合名を東京板橋合同労働組合とするならば、A産業の組合組織、B商店の組合組織、C興業の組合組織は、その東京板橋合同労組の「A産業支部(あるいはA産業分会)、B商店支部(あるいはB商店分会)、C興業の組合組織は「C興業支部(あるいはC興業分会)」などと位置づけて、その合同労働労働組合が定める(労働組合大会において定めます)の方針の下で各職場組織の活動が行われます。

合同労働組合の場合、その組合員の条件は一つの企業の従業員であることにはなく、その合同労組の「守備範囲」にある労働者ということになります。日本国憲法第28条に定められている労働三権(労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権・争議・ストライキ権)は、この企業の外に存在する合同労働組合が持つことになります。当然、労働組合法や労働関係調整法に定められた「労働組合」は、合同労組の場合「企業の外」に存在することになります。

日本の多くの労働組合は企業別に組織され、その構成員はその企業の従業員(場合によっては正社員のみ)などとされていますが、これは企業別労働組合がその規約によって、企業外の労働者が加入できないように排他的に定めているからに過ぎません。本来労働組合はよりオープンなものです。

合同労働組合には、その組織対象(組合の「守備範囲」)を地域別、業種別、職種別、業態別など様々に定めることが出来ます。たとえば、地域を定めて、○○地域合同労働組合とした場合は○○地域に働いている労働者を対象として組織されます。業種別の合同労働組合の場合、たとえばIT技術者を対象にした場合、東京IT労働者合同労組(組合名称は自由なので、たとえば「東京ITワーカーズユニオン」などでもかまいません)というような名称となり、その対象とする業種の労働者を労働組合員として迎えます。職種別の合同労働組合としては「管理職ユニオン」などがわかりやすいと思います。管理職労働者を組織対象とする合同労働組合です。

合同労働組合には、一定の地域・職種・業種で働いている(あるいは失業している=失業者ユニオンという合同労組もかつて存在しました)労働者が様々な企業・法人から加入してくるのですが、それは必ずしも、その労働者が働く企業・法人に労働組合の組織(複数名が組合員として存在して活動している組合組織)があって、そこが職場組織として加入してくるということだけではありません。働いている個々人が一人一人、合同労働組合に加入するということもあります。このような合同労働組合は「個人でも加入できる合同労働組合」といわれています。

企業別組合は基本的に個人加入方式です。たとえばA産業労働組合というA産業の社員のみを対象としている企業別労働組合には、その企業に働くaさんbさんcは、個人としてA産業労働組合に加入するのです。だから、ともすると「個人ではいるのが合同労組」で組織ごとはいるのが「企業別組合」と思われがちですが(企業に入ると有無を言わさず特定の労働組合に加入することになる「ユニオンショップ組合」が大企業などに多いのでこう思いがちです)、基本は合同労組は組織単位(個人がその職場に職場組織を作ってから加入する)で行うという時代が戦後しばらくは続いたのです。これは戦後の日本の「民主的」な政策の一つの軸に「労働組合の結成」ということがあったので、職場単位で組合を作りやすかったという理由にもよるのです。

しかし、最近では合同労組の多くは個人加盟が中心となっています。このような組合は「個人加盟方式の(あるいは一人でも加入できる)合同労働組合」ですが、こう語るのが長々しくて面倒くさいので、簡単に「一人でも入れる労働組合」とか「個人加盟ユニオン」とか言います。

で、私たち労働組合ネットワークユニオン東京(NU東京)は「個人でも加入できる(職場単位でも加入できます)合同労働組合です。その組織対象は東京都とその周辺で働いている労働者で、業種・業態・職種は定めていません。

といっても、東京は広いので実際は、東京都の23区部の東部(隅田川以東)を除く地域を地域の目安とし、業種的・業態・職種的にはIT、アパレル、外資、公益法人(社団・財団・NPOなど)、医療、福祉、小売・サービス業、事務職、営業職、現業職などをカバーしています。また、労働者の国籍は問いません。

長くなったので、今回はここまで。

つづく。

(かわせみ)

2013年3月22日 (金曜日)

アベクロ、棄民政策のもとで、IT労働者に仕事が回ってきた? でも、ブラック企業は無くなっていません。仕事選びは慎重に!

黒田東彦を日銀総裁に据えて、安倍政権は2%インフレ政策を推し進めようとしています。これに合わせるように、電気・ガスが値上するといいます(理由は円安などのようですが、まさに政策によって作られた値上げです)。しかし、マスメディアが取り上げた一部大企業の賃上げ(しかも、正社員の賞与だけが多い「名ばかり賃上げ」)のほかには、賃上げの話は滅多に聞きません。逆に大企業の中でもパナソニックなどは大幅賃金カット! 

黒田総裁は「できることは何でもやるし、達成できると確信している。円高、新興国からの安い物資の流入など、あらゆる要素が物価に影響するが、物価安定を確保する責務はどこの国でも中央銀行にある」などと宣言していますが。これは、労働者の生活など関係なく、とにかく物価を上げるというとんでもない見解で、まず政策の目標達成があり、人々の生活はその次というような、異様な「ご奉公」の姿勢です。

このままいくと賃金は上がらず物価だけが上がる最悪の状況が訪れます。

また、多くの人が指摘しているように、たとえ株価が上がったとしても、それが実体経済に結びつかず、さらにマネーゲームに投資され、実態無き好況が作り出される恐れすらあります。

このような状況、つまり結果がどうであろうと新しい経済政策が動き出すときに、活況を示す業界があります。それはIT業界です。安倍政権の「国土強靱化」にも、まずはIT環境の整備が必要です(東日本大震災で問題点が多く見つかったITシステムの作り直しも必要です)。消費増税に対応するシステムも作らねばなりません。そしてインターネット選挙。これこそ、IT業界しかできません・・・・・・。などなど、いまIT業界では、労働力不足気味? 某IT業界の営業マンは、ユニオンの問いかけにはっきりと言いました「いまは、待機労働者など出ませんよ」って。

そういえば、わがユニオンが関わるIT会社には、退職勧奨を強引に行っていた会社、待機労働者を整理し始めたいた会社が多くあるのですが、最近、退職勧奨の話が少なくなりました。またIT技術労働者からの相談も減ってきています。

私たちが過去・現在交渉を行ってきたIT企業は45社ほどになります。会社規模に関係なく、その中にはキチンとした企業もあれば果てしもないブラック企業もありました。できれば、いまのようにIT労働者に仕事が回った来ているときに、ブラック企業、労働者の権利を顧みずに使い捨てをする企業には人が行かないでほしいのすが、現実はそうはなっていません。IT労働者間では「○×社や××社はブラック」などという情報はある程度共有されているものの、常に新しく供給される若い労働者にはなかなか伝わらないし、不安定な雇用状況しか経験のない。ITバブル以降世代の労働者には「とりあえず仕事の確保」という意識が強く働いています。

せめて、IT労働者は、新しく働く企業・職場との労働契約をキチンと文書で結ぶこと(労働契約書は双方が保持するもので、IT会社にありがちな「自分の契約書を会社に渡す」はなしです)。その契約の際に労基法などの法に抵触するような内容の契約を求める企業には行かないこと。もし入った企業がブラックだった場合、すかさず辞めてしまうか、働き続ける場合は日々の記録をキチンととっておくこと。

そう、大事なことを忘れました。いくら仕事があるからといって、あるいは仕事上必要だから(会社からの要請含む)といって、身体をこわすまで働かないでください。

この働き方はおかしい? この会社、おかしい? た感じたら、ユニオンに相談を。

2013年3月 7日 (木曜日)

NU東京の15年間の相談結果から(その1、IT労働者)

以下の文は、NU東京の機関紙である「おれんじ」165号(本年3月1日号)に掲載された記事を基にしています。

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NU東京が15年間に受けた労働相談データを基にして、「日本の労働者」(少し大げさ)の状況を考えてみたく思います。

NU東京にはIT労働相談が多い?

  NU東京の特徴として、組合員にいわゆるIT関連の労働者が多いということがあります。2013年3月1日現在で、NU東京の支部・分会組織を持たない組合員の37%がIT労働者です。ライジングサン支部、帝産東整労、VAN分会の「非IT部門労働者」を加えた全組合員中でも25%を占めます。たしかに多い?

 2012年1年間に、NU東京に寄せられた労働相談件数は352件でした。そのうちIT関連労働者からの相談が48件なので、相談におけるIT労働者比率は14%ということになります。
 NU東京に寄せられる相談(ホットライン開設時の相談を除くもので、カルテが作成された相談)のうちIT労働者からの相談は15年間を通じて14%(3707件中519件)という結果が出ています。つまり相談受付件数では全体の14%であるIT労働者が組合員の37%を占めているのです。これはNU東京へのIT労働者の加入比率が高いのか?あるいは加入後の脱退率が低いのか? いずれ詳しく分析してみたく思います。

かつては時代の寵児

 では、IT労働者はどのように状況に置かれているのでしょうか?
 NU東京が結成されたのは1998年2月27日でした。日本の産業構造が製造業中心から非製造業(流通、金融、サービス、情報)に大きく変わろうとしているまさにその時代に、時代の寵児のように登場したのが「IT労働者」です。1998年、海の向こうではまさにITバブルが開花しようとしており、日本では「2000年問題」の解決に向けてIT労働者の不足が嘆かれていました。2000年には自民党政権の森首相による「イット(IT)」発言もありましたが、時代はIT労働者にとって前途洋々たるもの、のはずでした。
 1998年にNU東京に相談を寄せたIT労働者のうち、年収額が確認できている労働者6名(相談件数13名)のうち、特殊な1名(IT技術がないのに入社して、すぐに減給された労働者で年収は200万円)を除く5名の平均年収は640万円と比較的高額でした。

過酷な労働環境下のIT労働

 ところが、それから15年。IT労働者の賃金は下がり続け、労働環境も悪化し続けています。常に新しい知識と技術を求められ、同時に毎年大量のあらたなIT労働者が労働力市場に投入される現在、多くのIT労働者は大企業の2次、3次下請け、さらにその下請けで低賃金で働く、まさに「IT蟹工船」状態に置かれています。
 2012年にIT労働者から寄せられた48件の相談のうち年収がわかる相談は26件で平均年収は450万円でしたが、250万円に届かないIT労働者からの相談が6件ありました。また、年収で600万円程度のIT労働者でも、1ヶ月の時間外労働時間が常に150時間を超える労働者もいます(時間外賃金をキチンと計算し、週40時間労働に換算すると年収300万円以下になります)。IT労働者のおかれている状況は過酷といえます。

2013年2月 1日 (金曜日)

日本の労働者の賃金が1990年以降最低、そして製造業就労者は1000万人割れという状況で、実は膨大な「未払賃金」が発生しているのではないか?

昨日の新聞報道によると、日本の労働者の賃金(賞与を含む現金給与総額)は、厚生労働省が統計を取り始めた1990年以降で最低額になったそうです。報道によると、給与総額は1998年以降下がり続けているということですが、ならば2002年1月から2008年2月までの73ヶ月間続いたという「最長の好景気」である「いざなみ景気」、あるいは1999年1月から2000年末にかけての「ITバブル」とはいったい何だったのでしょうか?

日本の労働者は、政府が何といおうと(自民党であろうと民主党であろうと)、一部の大企業や、怪しげな起業家・ヒルズ族が濡れ手に粟で利益を享受している一方で、確実に貧困化してきたのです。

とくに「いざなみ景気」は、労働者の賃金抑制、大幅な「非正規」労働者の採用によって、企業は利益を確保し続けてきました。労働者の犠牲の最終的な仕上げが「残業代は払わなくて良い」という悪名高き「ホワイトカラーエクゼプション制」の法的整備でしたが、これはあまりにも酷く、社会格差も拡大したために、小泉・安倍・福田・麻生と続いた市場原理主義を基盤視した特権世襲政治家による自民党政府崩壊の一因となりました。

一方、今日の新聞報道によると、日本の製造業就業者が51年ぶりに1000万人を下回ったとのことです。

51年ぶりといっても、52年前は農林漁業従事者が多かった訳です。ところが、現在は、製造業に変わるのは「農林水産」でなくて「サービス・商業」です。これは日本の産業構造が販売・金融・情報・サービスにシフトしているということで(1990年代半ばで製造業中心ではなくなっている)、この非製造業中心の産業構造は、ともすれば使用者側が都合良く労働者を使うことができ、労働者サイドから見ると、労働時間は増えても(サービス残業の増大)賃金が増えないという問題があります。

工場労働を中心とした製造業は、労働時間管理が明確な上、労働組合も(企業組合であろうと)組織しやすく、労働時間に対する賃金支給にごまかしがきかないということがあります。一方、サービスや商業労働の場合、IT技術の進歩もあわせ、労働時間管理ができず(あるいは企業があえて行わず)、時には24時間態勢で勤務しても、時間外労働はカウントされないような状況を生みます。

近年、過重労働問題(過労死、病気休職)が多発しているのは、このような産業構造の変化も大きくあると思えます。

政府(厚労省)の発表の通り、下がり続けている日本の労働者の給与所得において、どれほどの未払い賃金が発生しているか(この額は統計に表れず隠されています)? このことが問われるべきです。

もし、実際に労働者が働いた時間に対して正当な賃金が払われていたら、どのような統計数字になるのか? 労働相談を受け様々な事例に接する立場からすると、給与所得は「増えていなければおかしい」のです。

だから、日本の労働者の給与所得が最低になったという状況のその裏には、確かに低賃金労の「非正規」労働者の大量最良があるものの、一方では産業構造の大幅な変化と、デタラメな賃金支給(制度)によって、日本の労働者に対する未払い賃金(給与所得統計に反映しない)が大幅に増えているという現実も見なければなりません。

労働行政はいま、労働者の立場に立つことなく、死ぬほど働いてようやく「労災」という酷さです。せめて実労働時間の把握と未払賃金の支払いを求めるようになれば、ものすごく「税収」が上がるはずです。労働者の生活を破壊するアベノミクスのインフレ策や大増税策より、その方が先決問題です。

2013年1月10日 (木曜日)

「ブラック企業」手法が蔓延する日本。基本はカルト対策と同じで、企業から離れること。

今野晴貴さんによる「ブラック企業」(文春新書)には、ブラック企業を知る入門書としては最適です。

ブラック企業とは、「黒い世界の会社」、つまり暴力団関係の企業と言う意味でなく、脱法行為(ときは違法)を繰り返して、労働者の心身ともに支配し、労働者の健康を壊し、そして「成長」あるいは「生き残る」企業のことです。マスメディアで大々的に宣伝をしている企業もあります。

「ブラック企業」ははじめ、主にネット上の言葉として登場してきました。今野さんは、この言葉が広く若ものに使われるようになったのは「2010年の末」としていますが、私たちのユニオンの相談受付でも、この言葉が、相談を寄せる人の側から発せられるようになったのは、だいたいその頃です。

「これって、ブラックですよね」とか相談者はいいます。また、その頃にはわがユニオンに多くいるIT労働者たちが「○○社、あそこって完全にブラックすで」とかとも言い始めました。

ブラック企業の定義はさておき、問題はいまや、このブラック企業が日本に蔓延しているということです。いまの首相である、安倍某からして、前に総理大臣だったときに「残業代は払わなくて良い」などという「ホワイトカラーエクゼンプション制」の導入を図ったわけですから、ある意味でブラック企業の後ろ盾ともいえるので、労働者の心身をむしばんでゆくブラック企業の経営陣は、いま、我が世の春を謳歌しているのかもしれません。

ブラック企業に対しての対応法は、「企業の社内論理よりも、法が優先」「会社の利益よりも、自分のからだが大事」という視点をもつことです。そして、心身ともに壊れる前に、必ず企業の外に相談の場を持ち、企業の外にある日本の法と、労働者保護制度を活用しながら(当然、労働組合もその一つですが、ブラック企業となっている会社のいうなりの企業内組合=御用組合は使えません)、失われたもの(未払賃金とか、壊された心身とか)を取り返す方法を考えることです。

なかには経営者のカルト的な価値観を労働者に押しつける企業もあるので、基本はカルト対策と同じと思っても大筋で間違いはありません。

今野さんの本を読んで、改めて感じたことに、ブラック企業の「人員整理」のしかたの悪辣さがあります。

かつて、私たちユニオンが結成されたころ(1998年)、世の中はリストラの嵐の末期ともいえる状態で、各企業には「人員整理屋」「人切り担当者」がいて、嫌がらせを伴う猛烈な退職強要を行って、それは時にはマスメディアで叩かれることもありました。しかし、それは、あくまでも人員削減(リストラ)の方策としての、嫌がらせ、退職強要で、それが終わると、今度は「人員整理屋」が不要となり、そして「リストラ」されました。

しかし、ブラック企業は違います。どこが違うか? それは企業のシステムとして人員採用段階から、違法な過重労働を前提にして、嫌がらせや退職強要を人事の恒常的システムとして、企業利益に直接結びつけています。労働者の心身破壊をシステムに組み込んで、これをエネルギー源として企業活動を行うのが「ブラック企業」です。

ブラック企業は一掃されなければなりません。

で、今日も1件、ブラック企業で働いている労働者からの相談がありました。最低でも月100時間の時間外労働、しかし、実際は20時間分しか払われないで、身体をこわしたら・・・。人事が「きみを雇うわけにはいかない」云々・・・・。

(かわせみ)

2013年1月 8日 (火曜日)

IT技術者の低賃金化と、「バーチャル会社」での過酷労働

IT労働者が高給を取っていたのは遙か昔のこと。私たちNU東京が結成された当時(1998年)は、年収500万以下のIT労働者は、「え? 仕事内容にしては賃金安いんじゃないの?」などという会話も良くあったし、年収1000万程度のIT技術者もまたまだユニオンの周りにいました。

しかし、いまは、一部上場企業の管理職技術者でも、なかなか1000万レベルはいません。そのレベルを確保するには上場企業が作った下請け会社の取締役の地位に収まるか(じつは本社から追い出されている)、自ら起業して「成功」する他はなくなっています。

IT労働者の低賃金化の背景には、自社ソフトを開発している企業が成り立たなくなり、「派遣」「業務委託」企業化しているということがあります。このような場合、かつては10人程度のソフト開発会社が数百人規模の会社になったりしますが、労働者の賃金は上がりません。ただ、使い捨てのパーツとしての労働者がそこにはいます。また、企業の経営者も「技術畑」から「営業畑」出身者が多くなり、技術職の人間を軽く見る傾向が生まれます。

それで、まだ、会社が何ものかを作っている、あるいは作っている会社の末端にいれば、IT労働者はそれなりに、働きがい?もスキルアップもあり得たかもしれません、しかし、最近はもっと過酷な労働現場が生まれています。

最近、Web上で詐欺的な商売をしていたベニーオークションが話題になりました。幾人もの有名芸能人がそのサクラになり虚偽のコメントを載せていた事件です。

じつは、このような詐欺的組織にも、雇用されているIT労働者が必ずいます(Webサイト管理や、システム構築あるいは簡単なソフト作り、ゲームの管理)。そこでの労働条件がどうなっているのか?

いまや、インターネットなしには経済活動が出来ないような世の中ですが、インターネット上に咲き乱れる「店舗」や「情報発信サイト」のうち、どれほどまでがまともなのでしょうか? 占いサイトに、出会い系サイト、情報交換サイトや人の紹介サイト? それらには数名から数十名のIT労働者が働いています。そして、その労働条件たるや劣悪そのもの、労基法などは全く無視の、労働時間あたりの賃金が500円を超えない違法労働が横行しています。

働いているのは20歳前後から20代中頃までのIT技術者たちが多く、雇われ社長(誰に雇われているかは不明の場合も)も20~30代! かれらは会社に寝泊まりし、十分な休みもなく働き続け、そして身体をこわしていきます。その数たるや全国に何万人いるのでしょうか? 私たちが昨年から今年にかけて相談を受けた数社でも、数百人を超えます。

なかには、会社の実態がない会社もありますから、このような「Web上の会社」で発生した未払い賃金をどうするかというと、その取り立てはなかなか難しい。過重労働で身体をこわして休み、その後会社に行ってみると跡形もなくなくなっていた、なんて話もあります。

労働局やら労基署は、このようなバーチャルな会社の問題には、本気になりません。アドバイスは「裁判をやったら」とか「労働組合に入ったら」とか・・・・。つまり門前払いです。

IT労働、Web上での経済活動に対しては、そこに働く労働者の保護と、積極的な労基法違反の取り締まりが必要です。

労働者には、バーチャル会社の過酷労働の中での未払いに対しては、すぐに会社を辞めて、すぐに未払賃金い請求を起こすことを勧めます。

最後に、このようなバーチャル会社の多くは、自らの系列(あるいはその「会社」が)、求人・求職サイトを立ち上げて、そこで人集めをしていることがあります。このような「食虫植物」的な会社に要注意!

(カラス)

2011年2月23日 (水曜日)

労基署が作り上げているともいえる、過重・超長時間労働の実態。(過労自殺訴訟に思う、国・労基署の責任の重さ)

労働者の健康を顧みない労働行政が、労働者を病気に追い込み(時には命まで奪い)、経営者による労働者の使い捨てを助長しています。

2月23日に起こされた過労自殺をめぐる損害賠償請求訴訟は、その労働行政の責任を問うものとして注目したく思います。

以下、毎日新聞(2月23日)の記事から。

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過労自殺:遺族が勤務先と国提訴 「労基署が適切指導せず」

 東証1部上場のプラントメンテナンス会社「新興プランテック」(横浜市)に勤務していた男性(当時24歳)の過労自殺を巡り、遺族が22日、同社と国に総額約1億3000万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。「会社と労働組合の労働協定が極度の長時間労働の要因となった」としたうえで、「協定を受理した国が適切な指導監督を行わなかった」と主張している。

 原告側代理人によると、民間の過労死を巡って国の監督責任を問う訴訟は初めて。

 訴えによると、男性は07年4月に入社。千葉事業所に配属されて現場監督などをしていた。人手不足や工期遅れなどから長時間労働を強いられ、08年1~8月の時間外労働は月平均約123時間で、7月には200時間を超えた。男性は精神障害を発症し、同年11月に自殺。昨年9月に労災認定された。

 会社と労組は、月150時間(納期が切迫している時は月200時間)までの時間外労働を認める協定を結んでいた。遺族側は「労働関係法令に違反している」と会社の責任を問うとともに、協定を受理した千葉労働基準監督署についても「会社や組合に是正を求めることなく受理し、適切な指導監督を行わなかった」と主張している。

(以下略)
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しかし、これは氷山の一角に過ぎません。時間外労働に関しての労使協定について、労基署は超過重労働を事実上黙認し続けています。だいたい、労働時間については労基法で1日8時間、週40時間という規定があり、これ以上の労働時間は基本的に「超法規的」で、だからこそ労働基準法36条に労使間合意の必要(36協定)が定められているのです。

この36協定について、いつの間にか「月45時間までならOK」という 「基準」が労働行政の場でできてしまい、企業にとっては、形だけの労使協定さえ結べば(労働者代表の選出をまともにやっている企業など少ない)、これが最低限の労働時間であるかのように扱われるので、1日9時間以上労働のになっている企業が多く生まれているという現実があります。

このことだけでも大問題だと思うのですが、労使協定に「例外」を設けて、さらに労働時間を延長させる企業が多くあります。

今回、訴訟になって企業では(納期が切迫している時は月200時間までの時間外労働を認める)となっていたそうです。とんでもないことです。

そもそも、企業活動は、ある面から見ると、常に「納期が切迫して」います。企業間競争が激しくなり、無理矢理仕事をとってくる営業から来る仕事は、常に「納期が切迫している」のです。

似たような事例は、最近半年の間に、私たちの組合でも2件相談を受け、2件とも現在団体交渉でその実態を明らかにしています。

1、IT企業における労使協定で、「特段の場合」として月80時間までの時間外労働が、労基署によって認められてしまったが、実際は職場への泊まり込みを含め、10時間を大きく超える時間外労働と休日労働が続き、とうとうしていた労働者は病気になり休職した事例(東京・品川労基署が時間外労働を認めているケース)

2、IT企業における労使協定で、「(前略)人員不足やトラブルへの対応、その他臨時業務への対応等が有った場合」は、月80時間までの時間外労働、年600時間の時間外労働が労基署によって認められ、実際は、この労働時間を大きく上回る時間労働したため、作業能率が落ち、会社から大幅減給を言い渡された事例(東京・中央労基署が時間外労働を認めているケース)

この2件の場合、どうやら労基署はプログラマやSEについて、月80時間、年600時間までの時間外労働を認める基準があると思わざるを得ません。そして、下請けのIT企業などでは、これが一旦認められると、この時間外労働時間が「最低基準」と化してゆく傾向があります。この二件とも、最大で月200時間を超える時間外労働が発生しています。

過重労働の歯止めである週40時間労働(月160時間程度)が、36協定が有れば45時間まで時間外労働がOKとなり、ならば、それが歯止めになるかというと、現実は、特例として、月80時間までの時間外労働が黙認となっている現実、そして、労働者の健康を考慮しない企業は、労働者が壊れれば休職そして、休職期間切れ解雇や、成績不良での退職強要などで、労働者を次々と使い捨ててゆく・・・・。これが労基署によってお墨付きをもらった企業の実情です。

だいたい、IT企業の「業務」、IT労働者の仕事といえば「トラブル」「緊急事態」への対処も主なものともいえます。だからこそ、IT下請け企業が成立するのです。しかし、現実を見ない労働行政は、この日常的業務(すなわち、本来週40時間労働の範囲でなければならない)をもって、いつ終わるともわからない超長時間労働の例外を認めているのです。

国の労働行政の労働時間根本的に改められねばなりません。労基署が月80時間まで、年600時間までの時間外労働を認めている現状は、言い換えれば労基署がIT職場の蟹工船的な状況(このような長時間労働を強いられる企業においては、実際の労働時間で計算すると時給が最低賃金を下回る場合が珍しくありません)を作っているともいえます。

労基署の本来の役目とは、このような過重労働が生じないようにすることではないでしょうか?

(カワセミ)

2011年2月 9日 (水曜日)

IT労働者の労働条件・労働環境は悪化し続ける。

昨年(2010年)1年間に、私たちの組合(NU東京)に寄せられた労働相談(電話あるいは面談で、一定の時間=だいたい15分以上=の時間をかけて、雇用と労働についてなされた相談)の件数は303件でした。件数としては2008年秋の「リーマンショック」以降の相談件数の急増がおさまり、2007年以前のレベルに戻ったいえます。

NU東京の場合、「ネットワークユニオン」という名前からか、あるいは所在地(東京都渋谷区)の関係からか、3303件中74件と、いわゆるIT・情報処理業界の人からの相談が目立ちます(それに、組合員の4分の1はプログラマ、SEなどです)。

このIT業界から寄せられる相談の内容が年々深刻化してきています。

長時間労働、先の見えない雇用契約期間、派遣(二重、三重派遣)問題などは10年以上前からありますが、最近はそれに低賃金と雇用不安が加わっています。いまや賃金額と労働時間から割り出した、「時給」が800円台、あるいは最低賃金を切るIT労働者からの相談が寄せられても、驚かなくなってしまいました。

例えば、「年俸」を300万とされ、しかも年間の時間外労働時間が600時間を超えてしまうケース・・・!!突発的事態や、「契約の期間を守る」ために、36協定を超えて長時間でエンドレスに働かされるケース・・・!半面、仕事がない、会社がアブナイ、という理由で、雇用契約期間(しかも半年程度の短期間)内にもかかわらず、「自宅待機」などといわれ賃金が払われないケース・・・。

これらはいずれも法的にも大きな問題があり違法なケースがありますが、それでもIT労働者は働く。そして働いて身体をこわすと、会社から「休職期間満了」で「解雇」と言われる。いや、解雇ならまだ良い方で「自然退職」とか「契約終了」などと言われて、事項都合退職扱いにされてしまうケースが多くあります。

最近2年は、派遣先から本社に戻ってみると、あるいは病気休養から復帰しようとしたら、会社が無くなっていたという問題も目立っています。このようなケースでは多額の未払い賃金も発生します。

使用者は、過重な労働、劣悪な労働環境で「壊れた」労働者に代えて、常に新しい(若い)、なによりもより賃金が安い労働者を雇い替えてゆきます。なんと前時代的な労働力の使い捨てでしょうか?

そもそも、IT・情報処理の従事者は「高度で専門的機能」を有するがゆえに、例外的に変形労働機関や長時間労働が「認められてきた」(私たちNU東京は、過重労働は認めませんが)経過があります。しかし、それは少なくとも年収1000万円以上で、健康に配慮がされた職場環境で、一仕事が終われば、十分な休暇・休養が取れる労働が前提でなければなりません。

労働基準監督署は、今日も、IT企業の使用者から提出される「超長時間労働」を前提とするかのような、例外事項付きの36協定を受け続けている(認め続けている)のですが、労働実態を見ない労働行政のあり方は、日本のIT職場を荒廃させていきます。

いまや、「蟹工船」的職場となっているIT職場。そこではたらく労働者が日々壊れ、また新たに雇われ、さらに壊れていくという、この流れは海外での安いIT労働力の取得へと進みますが、それもやがて「日本の企業」としては限界がきます。他国資本に身売りするか、他国に本部を移転するか・・・。

そのとき、日本には何が残っているのでしょうか?

(谷のウグイス)

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