日本の労働者の賃金が1990年以降最低、そして製造業就労者は1000万人割れという状況で、実は膨大な「未払賃金」が発生しているのではないか?
昨日の新聞報道によると、日本の労働者の賃金(賞与を含む現金給与総額)は、厚生労働省が統計を取り始めた1990年以降で最低額になったそうです。報道によると、給与総額は1998年以降下がり続けているということですが、ならば2002年1月から2008年2月までの73ヶ月間続いたという「最長の好景気」である「いざなみ景気」、あるいは1999年1月から2000年末にかけての「ITバブル」とはいったい何だったのでしょうか?
日本の労働者は、政府が何といおうと(自民党であろうと民主党であろうと)、一部の大企業や、怪しげな起業家・ヒルズ族が濡れ手に粟で利益を享受している一方で、確実に貧困化してきたのです。
とくに「いざなみ景気」は、労働者の賃金抑制、大幅な「非正規」労働者の採用によって、企業は利益を確保し続けてきました。労働者の犠牲の最終的な仕上げが「残業代は払わなくて良い」という悪名高き「ホワイトカラーエクゼプション制」の法的整備でしたが、これはあまりにも酷く、社会格差も拡大したために、小泉・安倍・福田・麻生と続いた市場原理主義を基盤視した特権世襲政治家による自民党政府崩壊の一因となりました。
一方、今日の新聞報道によると、日本の製造業就業者が51年ぶりに1000万人を下回ったとのことです。
51年ぶりといっても、52年前は農林漁業従事者が多かった訳です。ところが、現在は、製造業に変わるのは「農林水産」でなくて「サービス・商業」です。これは日本の産業構造が販売・金融・情報・サービスにシフトしているということで(1990年代半ばで製造業中心ではなくなっている)、この非製造業中心の産業構造は、ともすれば使用者側が都合良く労働者を使うことができ、労働者サイドから見ると、労働時間は増えても(サービス残業の増大)賃金が増えないという問題があります。
工場労働を中心とした製造業は、労働時間管理が明確な上、労働組合も(企業組合であろうと)組織しやすく、労働時間に対する賃金支給にごまかしがきかないということがあります。一方、サービスや商業労働の場合、IT技術の進歩もあわせ、労働時間管理ができず(あるいは企業があえて行わず)、時には24時間態勢で勤務しても、時間外労働はカウントされないような状況を生みます。
近年、過重労働問題(過労死、病気休職)が多発しているのは、このような産業構造の変化も大きくあると思えます。
政府(厚労省)の発表の通り、下がり続けている日本の労働者の給与所得において、どれほどの未払い賃金が発生しているか(この額は統計に表れず隠されています)? このことが問われるべきです。
もし、実際に労働者が働いた時間に対して正当な賃金が払われていたら、どのような統計数字になるのか? 労働相談を受け様々な事例に接する立場からすると、給与所得は「増えていなければおかしい」のです。
だから、日本の労働者の給与所得が最低になったという状況のその裏には、確かに低賃金労の「非正規」労働者の大量最良があるものの、一方では産業構造の大幅な変化と、デタラメな賃金支給(制度)によって、日本の労働者に対する未払い賃金(給与所得統計に反映しない)が大幅に増えているという現実も見なければなりません。
労働行政はいま、労働者の立場に立つことなく、死ぬほど働いてようやく「労災」という酷さです。せめて実労働時間の把握と未払賃金の支払いを求めるようになれば、ものすごく「税収」が上がるはずです。労働者の生活を破壊するアベノミクスのインフレ策や大増税策より、その方が先決問題です。
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