アベノミクスによって、賃金が上昇する? そんな保証はどこにもない。考えられるのは、さらなる過重労働と時間外賃金の未払い。
安倍政権の労働「目玉」は2%インフレ政策で、これによる賃金上昇です。この2%のインフレという数字がどこから出てきてのかわかりませんが、要は小バブルを作り出して景気にテコ入れするということなのでしょうか?
この年末年始のテレビ番組を見ていると、経済評論家やらニュース解説者やらの中に「バブル期」を懐かしむような発言が目立ったようにも思えます。このような評論家や専門家には失われた20年を語る資質も資格も能力もないのですが、安倍首相その人も、バブルの夢を見ているとしたら、これは悲劇でしかありません。
そもそも、政府が日銀にいかに圧力をかけようとも、そして円札を増刷しようとも、それは一部の大企業やマネーゲームで濡れ手に粟の投資家の利益にしかつながりません。実際には円安になるので国民の資産は減ってしまい(グロバールな視点に立てば)、インフレが進行すれば蓄えも切り崩すことになります。
肝心なことは安倍首相の甘い言葉のように賃金の上昇があるかどうかですが、それは難しいのです。なぜならば「失われた20年」に、企業の収益が賃金に回らなくなる仕組みがすっかり出来上がっているからです。逆にこの20年間、企業は労働者の賃金を下げることによって企業の収益を上げ、そして収益は企業の内部留保なり投資に回すのみでした。いまや企業にとって労働者は単に使い捨てる「物」でしかありません。
また、日本の産業構造も製造業中心から金融・商業・サービスへと移行し、賃金の決定はかつての年齢・賃金テーブルに基づく「労働時間」から、労働による「実績」とか「成果」などが前面に出され、しかも経営者が得手勝手に導入した「評価基準」で一方的に「評価」するようになっています。そしてこのことが、日本では時間外労働に対する賃金未払という不法が横行している状況を生んでいます。
いくらインフレになっても賃金はそう上がらない、というか上がりようがない状況があるのです。
日本の労働者賃金を上げる早道は、労働時間に対して不法にも払われていない賃金を企業が払うことです。また過重労働(日本では死に至らないと、なかなか「労災」と認められない状況があります)をしなくても生活できる賃金を政府が保証することです。
安倍首相は、かつて企業が残業代を払わなくても良いという法「ホワイトカラーエクゼンプション」を成立させようとしました。その考えが変わったとは思えません。ならば、安倍首相が想定する賃金上昇とは何でしょうか?
インフレを起こし、形だけでも市場で金が動くようにし、株価を上げ、それが何らかの形で企業の活動を活発化させ(これが雇用状況好転となる保証などありません)、万が一企業活動が活発化したら・・・・・・
労働者の賃金が上がるか?
いや、現在の労使関係を前提とする限り、賃金未払いの過重労働が蔓延するのだけではないでしょうか?
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労働者の賃金確保と、待遇改善は、【労働組合の仕事】です。
政府にやらせると共産主義となり、中国と同じような経済構造になります。
文句があるなら、政府ではなく、状況を作り出しのうのうと年金や退職金で遊ぶ
団塊以上の世代と資産階級を叩きましょう。
「お馬鹿な民衆は資産家に搾取されて潰れるのが、資本主義の原則です」
アベノミクスで経済が活性化すると予測しているのなら
この流れが来る前に、腐りきった労働組合を叩き直す必用がありませんか?
>>現在の労使関係を前提とする限り、賃金未払いの過重労働が蔓延するのだけではないでしょうか?
この流れを作って容認し、動かないのは労働者自身です。
これこそストライキで叩き潰すべきだと考えます。
ですが、正社員が契約や派遣社員を犠牲にしている限り、幾らストライキを起こしても、
【大手企業は正社員を切り捨てて、外国人労働者や非正規社員を増やすだけ】
と言うのを忘れてはいけません。
投稿: | 2013年3月 4日 (月曜日) 午後 05時30分