職場のいじめ・嫌がらせに遭ったら、その背景を考えてみること。公務員労働組合(官公労)は業務委託先や下請け、「非正規」労働者の抱える問題に対応を!
昨年(2012年)1年間にNU東京が受け付けた労働相談(一定の時間話が聞けたもの)は350件余でした。そのうち4件に1件(24%)は職場でのいじめや嫌がらせに関する相談でした。
NU東京が受ける相談で件数が多いのは、職場いじめ、解雇、退職勧奨です(この15年間、この3つが毎年相談のトップ3です)。
職場での嫌がらせは、職場環境問題、会社組織の再編成(規模縮小や部門閉鎖)などが背景にあることがほとんどです。この嫌がらせの背景を見ないで「上司によるパワハラ」「同僚たちによる嫌がらせ」と考えてしまうと、問題は個人間の問題になってしまい、解決の糸口が見いだせなくなります。
たとえば、ある日、上司が嫌がらせとしか思えない業務命令を出し、そしてそれ以降厳しく仕事を監視するようになったというようなケース。その背景には上司が「人員削減目標」を経営陣から示され、その上司に目標達成の圧力が掛かっていると、考えてみましょう。
ある程度規模が大きな会社の場合、この「人員削減対象」が数十人あるいは数百人になる場合もあり、時には「希望退職者募集」とともに、職場での嫌がらせが発生することがあります。
このような場合、自分一人が嫌がらせの対象ではなく、ある条件の人(たとえば勤続年数が長いとか、短いとか、会社の「反主流」に属しているとか)が嫌がらせの対象になっているならが、それは嫌がらせ(パワハラ)が表面に出ているものの、人員削減・リストラが本質になります。従って、問題の本質は「嫌がらせをしている上司」ではなく、会社の経営陣にあることになります。往々にしてこのようなリストラ型嫌がらせの場合、その「上司」もさらに「上」から嫌がらせや退職勧奨を受けていたりします。
質の悪い上司の中には「人減らし」をするために雇われたような「嫌がらせ屋」がいるかもしれませんが、この場合も、本質は会社経営陣のリストラにあります。問題を大きくとらえて、労働組合に(企業内労働組合が「嫌がらせ」のためのシステムになってしまっている場合は外部のユニオンなどへ)問題を提起しましょう。
次に、環境型の嫌がらせ。職場の同僚からの嫌がらせで多いのは、劣悪な職場環境や低い労働条件が原因となっていることが多くあります。
所定時間を超えての長時間労働があり、しかも時間外労働賃金が違法にも払われない職場、働くためのスペースが十分になくて、労働安全衛生に配慮がない職場、同じ仕事をしている個々人の雇われている条件がまちまちで、しかもその基準が不明な職場(就業規則がなかったり、見せてもらえない=これは法律違反です)。
このような職場では、働く個々人間のちょっとした意見の違いや、感覚の違いが「嫌がらせ」に結びつくことがあります。雇用・職場のルールがキチンと定められていないために労働者間でのいがみ合いや嫌がらせが生じるわけです。問題の本質は経営側にあります。労働条件がキチンと定められていないために、労働者が個々人が、自分の雇用を守ろうとするため経営者に気を遣う(ときには経営者の機嫌をとったり、無理を承知で言うことを聞いたり)というのは本来おかしなことです。
最後に残念ながら、公益職場(自治体や公共の職場)から時折寄せられる嫌がらせの問題として、公共団体職員(公務員など)が現場の業務委託労働者に嫌がらせをするということがあります。同じような仕事をしていても公務員労働者と下請けや業務委託労働者の賃金には著しい格差があり、しかも職場では公務員労働者が業務指示をしたり、命令をしたりする。
問題は、現場労働者の労働条件を低く抑える業務委託契約などにあります。いわゆる「公契約」の内容が違法な労働条件や労働環境を生む場合には、これは規制されるべきですが、現実はそうはなっていません。
業務委託労働者や臨時委託労働者と接することがある公務員労働者(多くは「労働組合」に組織されています)には、その業務を行っている労働者の労働条件や労働環境について注意を払って欲しく思います。比較的「恵まれた」環境にあり、「強い」立場にある公務員労働者による現場の下請けや「非正規」労働者への嫌がらせは許されるものではありません。
公務員労働者により組織される労働組合(官公労)の、業務委託現場や下請け仕事における雇用・労働問題(嫌がらせ問題を含む)に対応する相談窓口の設置の必要性を強く感じます。
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