「明けましておめでとう」と決していえない、日本の労働者の状況。
年が明けました。
築地では1本のマグロが1億5千万円を超える値で競り落とされたとか、株価が上昇しているとか、なにやら景気の良さそうなニュースが流れていますが、日本の労働者の現実は深刻なままです。
労働者の賃金は下がり続け、「非正規」で使い捨ての労働(民主党政権は「派遣」「有期雇用」において、使い捨てのための法的整備を行うという最悪な遺物を残しています)が、世の主流となり、さらに社会保障制度はズタズタにされたままで、福祉、医療の現場は劣悪な労働環境と外資を含む「福祉・医療ビジネス」の草刈り場になっています。
労働組合の組織率が18%を下回ったとのことですが、問題は18%以下の組織率にあるのではなく、この大企業と公務員中心の「労働組合」が、下請けや子会社などで働いている労働者の劣悪な労働条件・環境に支えられてあり、なおかつ18%弱の労働組合に組織された労働者も、厳しい企業の労働管理下にあるということです。
もっとも端的な例は、連合の歴代幹部を輩出している電力会社の労働組合です。これらの労働組合は日本でもっとも労働環境に恵まれた組合です(東電福島原発事故以降は多少異なるかもしれませんが)。この労働組合は決して「協力会社」や原発労働で使い捨てられてきた名もなき労働の問題を取り上げてはいません。なぜならば、そこを問題とすると、自らの存在基盤が揺らぐからです。
また、公務労働者も、その関連事業で働く労働者のことをほとんど取り上げません。実は、私たちユニオンに寄せられる「職場いじめ」問題において、その公務労働者が、現場の臨時労働者や、業務委託を受けて働いている労働者を陰湿にいじめるケースが実に多いのです。あるいは、その権威を盾にとってのパワーハラスメントもあり、公務職場における職場いじめ問題の加害者が公務員労働者であることは典型的なケースといえます。
福祉、学校、諸施設などの現場では、いまや恵まれた労働条件を持つといえる公務員が、労基法違反の劣悪な労働環境で、かつ明日の雇用にも不安を感じている非正規労働者を圧迫しているのが現実です。
問題意識をもつ公務員労働者あるいは労働組合の中にはこれらの問題を取り上げて、業務委託などにおける「公契約」にあたっては、労基法の遵守などを明確にし、労働者の権利を保障するよう求めています。しかし、現実には圧倒的多くの公務労働者が、自らの足下で働く労働者と自らを分け隔てているのです。
このような労働者間の格差と、労働組合の建前と実際の行動の間隙を縫って現れたのが大阪に始まったファシズムと市場原理主義が合体した「維新の会」の動きですが、その誕生のエネルギー源に「労働組合」があるのは残念なことです。
2013年が、労働者のための労働組合運動復活の年になればよいのですが、まだ労働組合運動は「底を打っていない」という感を強くもたざるを得ません。
今日は、次のような労働相談がありました。具体的にはあまり書けませんが。これが、労働組合から疎外されている労働者のひとつの現実です。
*医師の診断は無視して出勤するように求める店長*
大企業の系列(かなり下の方)子会社が運営する店舗に働くアルバイト(といっても30代で、この仕事によって生計を立てている)。インフルエンザにかかり、医師の診断を受け、医師は一定期間の休みを取るように指示した。
しかし、この店舗の店長は医師の判断に従うことなく出勤して働くように求める。店長に従わないと職を失うかもしれない。と相談者は思っている。
このような、相談は実に多くあります。そして相談を寄せる人は、同じ問題を抱えている人のごくごく一部と思われます。
これが日本の労働者の現実です。
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