解雇が無理と知っている経営者は、退職強要を行い、ときには「裁判でもやって見ろ」「負けたらおまえが金払え」などと開き直る。
会社が労働者に退職勧奨(退職強要ともいえる)を行うとき、「文句があるなら裁判でも何でもやってみろ」と退職勧奨事案にもかかわらず脅しをかける経営者がいます。
そもそも、「解雇」ではないのだから、裁判もなにもなく「やめる意志はない」旨会社側に伝えるのが基本的な対応法ですが、そんなことを言う経営者に限って「本来は懲戒解雇なのだが、おまえのためを思って辞表の提出ですます」みたいなことも言うのです。
このような脅かし方をする経営者は、わがNU東京の15年間の相談の経験から、毎年必ず幾人か現れるものです。悪質な経営者の一つのパターンといえます。
要は、解雇理由がないから脅かして辞めさせようとしている(辞表を書かせて、労働者の側が労働契約を打ち切った形にする)わけですが、こう言われた労働者のなかには「裁判まではできない」と泣く泣く辞表を提出してしまう人もいます。また、経営者はさらに、「本来は損害賠償?を請求する裁判も起こしたいところだが」などと言う場合すらあります。
経営者がこんなことを言う場合、多くは「解雇は無理」と経営者が考えていると思えます。冷静になって対応しましょう(経営側の言うことをキチンと記録しておきましょう)。
さらに、経営者の中には「もし裁判で争った場合、おまえが負けたら裁判費用を全部払うんだぞ」などとさらにとんでもない脅しをかけるものがいます。最近私たちが受けた相談では、「おまえが負けたときに数百万円を払えるのか」などと脅す経営者がいました。
しかし、一般的には裁判の経験などない労働者は、こう言われるとかなり驚きます。経営者はこうして無理筋を通していきます。
経営者に脅かされていなくても、労働相談を受けていると、時々、「不当解雇と思うが訴訟を起こして負けたらお金が払えない」ので、裁判は出来ない、という労働者がいます。また、解雇問題で弁護士をつけると数百万円かかると思っている労働者も時折います。
なぜそう思うのですか? と聞いてみると、それは「友達から言われた」とか「インターネットでそういう意見を見た」あるいは少し知識があると「敗訴すると相手側の訴訟費用を負担する場合がある」などとの答えが返ってきます。
結論から言うと、不当解雇や不当な労働条件の引き下げなどに対する訴訟は、そのような多額のお金は必要有りません。ましてや「負ければ数百万」などということもないし、万が一敗訴しても相手側の弁護士費用などを払うこともありません。訴訟費用とは訴訟に関わる印紙代程度のことでこれは解雇事案の場合せいぜい数万円程度、しかも、裁判では和解で解決することが多く、その場合は勝ち負けなしですから。このような訴訟費用の負担は考えなくても良いのです。
もし、会社が無理筋な解雇をごまかすために、「裁判でも何でもやってみろ」という退職強要をした場合、くれぐれも驚かないように。そして早めに、労働組合や公的機関の労働相談を受けてください。これらの相談は基本的に無料のはずです。
(かわせみ)
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