IT労働者の労働条件・労働環境は悪化し続ける。
昨年(2010年)1年間に、私たちの組合(NU東京)に寄せられた労働相談(電話あるいは面談で、一定の時間=だいたい15分以上=の時間をかけて、雇用と労働についてなされた相談)の件数は303件でした。件数としては2008年秋の「リーマンショック」以降の相談件数の急増がおさまり、2007年以前のレベルに戻ったいえます。
NU東京の場合、「ネットワークユニオン」という名前からか、あるいは所在地(東京都渋谷区)の関係からか、3303件中74件と、いわゆるIT・情報処理業界の人からの相談が目立ちます(それに、組合員の4分の1はプログラマ、SEなどです)。
このIT業界から寄せられる相談の内容が年々深刻化してきています。
長時間労働、先の見えない雇用契約期間、派遣(二重、三重派遣)問題などは10年以上前からありますが、最近はそれに低賃金と雇用不安が加わっています。いまや賃金額と労働時間から割り出した、「時給」が800円台、あるいは最低賃金を切るIT労働者からの相談が寄せられても、驚かなくなってしまいました。
例えば、「年俸」を300万とされ、しかも年間の時間外労働時間が600時間を超えてしまうケース・・・!!突発的事態や、「契約の期間を守る」ために、36協定を超えて長時間でエンドレスに働かされるケース・・・!半面、仕事がない、会社がアブナイ、という理由で、雇用契約期間(しかも半年程度の短期間)内にもかかわらず、「自宅待機」などといわれ賃金が払われないケース・・・。
これらはいずれも法的にも大きな問題があり違法なケースがありますが、それでもIT労働者は働く。そして働いて身体をこわすと、会社から「休職期間満了」で「解雇」と言われる。いや、解雇ならまだ良い方で「自然退職」とか「契約終了」などと言われて、事項都合退職扱いにされてしまうケースが多くあります。
最近2年は、派遣先から本社に戻ってみると、あるいは病気休養から復帰しようとしたら、会社が無くなっていたという問題も目立っています。このようなケースでは多額の未払い賃金も発生します。
使用者は、過重な労働、劣悪な労働環境で「壊れた」労働者に代えて、常に新しい(若い)、なによりもより賃金が安い労働者を雇い替えてゆきます。なんと前時代的な労働力の使い捨てでしょうか?
そもそも、IT・情報処理の従事者は「高度で専門的機能」を有するがゆえに、例外的に変形労働機関や長時間労働が「認められてきた」(私たちNU東京は、過重労働は認めませんが)経過があります。しかし、それは少なくとも年収1000万円以上で、健康に配慮がされた職場環境で、一仕事が終われば、十分な休暇・休養が取れる労働が前提でなければなりません。
労働基準監督署は、今日も、IT企業の使用者から提出される「超長時間労働」を前提とするかのような、例外事項付きの36協定を受け続けている(認め続けている)のですが、労働実態を見ない労働行政のあり方は、日本のIT職場を荒廃させていきます。
いまや、「蟹工船」的職場となっているIT職場。そこではたらく労働者が日々壊れ、また新たに雇われ、さらに壊れていくという、この流れは海外での安いIT労働力の取得へと進みますが、それもやがて「日本の企業」としては限界がきます。他国資本に身売りするか、他国に本部を移転するか・・・。
そのとき、日本には何が残っているのでしょうか?
(谷のウグイス)
« 解雇・退職勧奨・労働条件切り下げなどに直面したら・・・。 労働相談ホットラインを2月18日・19日に開設します。 | トップページ | 会社側補佐人として団体交渉に出席した行政書士が「病気休職は債務不履行」と繰り返し主張。 »
「ニュース」カテゴリの記事
- NU東京結成20周年を祝う会が持たれました。(2018.07.05)
- アベクロ、棄民政策のもとで、IT労働者に仕事が回ってきた? でも、ブラック企業は無くなっていません。仕事選びは慎重に!(2013.03.22)
- 安倍政権の賃上げ政策は内実がない。効果的な賃上げは最低賃金の大幅引き上げと、ただ働きの根絶。(2013.03.18)
- 3月7日(木)~9日(土)に、関西地域で「年度末! 解雇・雇止めホットライン」開設。(2013.02.25)
- 不正・不法に対する会社・団体「組織内」での内部告発は、もみ消しにつながりかねない。(2013.02.06)
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- ブラック社労士問題。私たちが経験している消極的なブラック社労士たち。(2015.12.21)
- アベクロ、棄民政策のもとで、IT労働者に仕事が回ってきた? でも、ブラック企業は無くなっていません。仕事選びは慎重に!(2013.03.22)
- IT労働者の労働条件・労働環境は悪化し続ける。(2011.02.09)
- IT労働者の貧困を生み出す、中間搾取:「IT派遣」の全面禁止を!(2009.08.17)
- IT産業で多発する解雇、未払い、過重労働問題。(2009.04.15)
「労働組合」カテゴリの記事
- VAN(株式会社ヴァンヂャケット)の子会社が突如「解散」。組合員を解雇!(2023.01.12)
- 5月1日(水)はメーデー。日比谷メーデーへの参加を!(2019.04.04)
- NU東京結成20周年を祝う会が持たれました。(2018.07.05)
- 日本は労働者不足。こんな時は、キチンと要求。(2017.06.02)
- これは既に異常な国家になっているのでは?労働運動から安倍政権の腐敗を考える。(2017.03.06)
「労働相談」カテゴリの記事
- 2024年内の相談受付は12月27日まで、新年は1月6日からです。(2024.12.12)
- 年末年始の相談受け付け(12月24日から1月9日までは相談受付けを休止いたします)。(2022.12.19)
- 保険外交員搾取(さくしゅ)被害弁護団が、2月14日に相談ホットラインを開設。(2019.02.18)
- 「突然の配転」の原因、労働者不足を認識できない会社の経営危機(2018.04.16)
- うつ病と診断されたら、無理せず、治療に専念を! (2017.01.08)
「仕事」カテゴリの記事
- 保険外交員搾取(さくしゅ)被害弁護団が、2月14日に相談ホットラインを開設。(2019.02.18)
- そんなことまで商売に?「退職代行業」に思う。(2018.07.30)
- 「突然の配転」の原因、労働者不足を認識できない会社の経営危機(2018.04.16)
- 定年後再雇用問題に見る。政策の矛盾と「働かせ方改革」(2018.04.04)
- 日本は労働者不足。こんな時は、キチンと要求。(2017.06.02)
「雇用条件」カテゴリの記事
- 5月1日(水)はメーデー。日比谷メーデーへの参加を!(2019.04.04)
- どこまで有効?「年5日の年次有給休暇の確実な取得」について考える。(2019.01.22)
- そんなことまで商売に?「退職代行業」に思う。(2018.07.30)
- 定年後再雇用問題に見る。政策の矛盾と「働かせ方改革」(2018.04.04)
- 政府の「働き方改革」、1月80-100時間の時間外労働時間限度は根本的に間違っている。(2017.03.13)
「リストラ」カテゴリの記事
- 「突然の配転」の原因、労働者不足を認識できない会社の経営危機(2018.04.16)
- うつ病と診断されたら、無理せず、治療に専念を! (2017.01.08)
- NU東京の次回土曜相談は4月16日です。(2016.04.13)
- ブラック社労士問題。私たちが経験している消極的なブラック社労士たち。(2015.12.21)
- 個人加盟労組ということの意味(その2-「個人」の変化1)(2015.12.15)
「働く」カテゴリの記事
- そんなことまで商売に?「退職代行業」に思う。(2018.07.30)
- NU東京結成20周年を祝う会が持たれました。(2018.07.05)
- 「突然の配転」の原因、労働者不足を認識できない会社の経営危機(2018.04.16)
- 月100時間、2ヶ月連続80時間の時間外労働!過労死労働の合法化は許されない。(2017.03.13)
- これは既に異常な国家になっているのでは?労働運動から安倍政権の腐敗を考える。(2017.03.06)
「派遣」カテゴリの記事
- 個人加盟労組ということの意味(その2-「個人」の変化1)(2015.12.15)
- 個人加盟労組ということの意味(大げさに言えば歴史的変遷 その1)(2015.12.08)
- 私たちの組合(ユニオン)のこと ☆その3 全国一般労働組合のこと(2015.12.01)
- 明日は、私たちユニオンの定期大会(それにしても、この20年、労働者の生活は酷くなりました)(2015.11.06)
- アベノミクスのインフレ政策で、残業ゼロラインが引き下げられたら・・・!将来は現在年収500万円レベルも残業代ゼロとなる。(2014.06.18)
「職場」カテゴリの記事
- うつ病と診断されたら、無理せず、治療に専念を! (2017.01.08)
- 個人加盟労組ということの意味(その2-「個人」の変化1)(2015.12.15)
- 個人加盟労組ということの意味(大げさに言えば歴史的変遷 その1)(2015.12.08)
- 私たちの組合(ユニオン)のこと ☆その2 私たちのルーツ(2015.11.24)
- 私たちの組合(ユニオン)のこと ☆その1(2015.11.17)
「労働条件」カテゴリの記事
- 5月1日(水)はメーデー。日比谷メーデーへの参加を!(2019.04.04)
- 「突然の配転」の原因、労働者不足を認識できない会社の経営危機(2018.04.16)
- 定年後再雇用問題に見る。政策の矛盾と「働かせ方改革」(2018.04.04)
- 日本は労働者不足。こんな時は、キチンと要求。(2017.06.02)
- 月100時間、2ヶ月連続80時間の時間外労働!過労死労働の合法化は許されない。(2017.03.13)
「IT」カテゴリの記事
- 個人加盟労組ということの意味(その2-「個人」の変化1)(2015.12.15)
- 私たちの組合(ユニオン)のこと ☆その1(2015.11.17)
- アベクロ、棄民政策のもとで、IT労働者に仕事が回ってきた? でも、ブラック企業は無くなっていません。仕事選びは慎重に!(2013.03.22)
- NU東京の15年間の相談結果から(その1、IT労働者)(2013.03.07)
- 日本の労働者の賃金が1990年以降最低、そして製造業就労者は1000万人割れという状況で、実は膨大な「未払賃金」が発生しているのではないか?(2013.02.01)
「IT職場」カテゴリの記事
- 政府の「働き方改革」、1月80-100時間の時間外労働時間限度は根本的に間違っている。(2017.03.13)
- 基本は週40時間労働。月80-100時間の時間外労働法制化には大反対。(2017.03.10)
- うつ病と診断されたら、無理せず、治療に専念を! (2017.01.08)
- NU東京の次回土曜相談は4月16日です。(2016.04.13)
- 個人加盟労組ということの意味(その2-「個人」の変化1)(2015.12.15)
「情報処理職場」カテゴリの記事
- 私たちの組合(ユニオン)のこと ☆その1(2015.11.17)
- アベクロ、棄民政策のもとで、IT労働者に仕事が回ってきた? でも、ブラック企業は無くなっていません。仕事選びは慎重に!(2013.03.22)
- NU東京の15年間の相談結果から(その1、IT労働者)(2013.03.07)
- IT技術者の低賃金化と、「バーチャル会社」での過酷労働(2013.01.08)
- IT労働者の労働条件・労働環境は悪化し続ける。(2011.02.09)
「労働環境」カテゴリの記事
- 5月1日(水)はメーデー。日比谷メーデーへの参加を!(2019.04.04)
- どこまで有効?「年5日の年次有給休暇の確実な取得」について考える。(2019.01.22)
- 「突然の配転」の原因、労働者不足を認識できない会社の経営危機(2018.04.16)
- 定年後再雇用問題に見る。政策の矛盾と「働かせ方改革」(2018.04.04)
- 日本は労働者不足。こんな時は、キチンと要求。(2017.06.02)
この記事へのコメントは終了しました。
« 解雇・退職勧奨・労働条件切り下げなどに直面したら・・・。 労働相談ホットラインを2月18日・19日に開設します。 | トップページ | 会社側補佐人として団体交渉に出席した行政書士が「病気休職は債務不履行」と繰り返し主張。 »
コメント