労基署が作り上げているともいえる、過重・超長時間労働の実態。(過労自殺訴訟に思う、国・労基署の責任の重さ)
労働者の健康を顧みない労働行政が、労働者を病気に追い込み(時には命まで奪い)、経営者による労働者の使い捨てを助長しています。
2月23日に起こされた過労自殺をめぐる損害賠償請求訴訟は、その労働行政の責任を問うものとして注目したく思います。
以下、毎日新聞(2月23日)の記事から。
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過労自殺:遺族が勤務先と国提訴 「労基署が適切指導せず」
東証1部上場のプラントメンテナンス会社「新興プランテック」(横浜市)に勤務していた男性(当時24歳)の過労自殺を巡り、遺族が22日、同社と国に総額約1億3000万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。「会社と労働組合の労働協定が極度の長時間労働の要因となった」としたうえで、「協定を受理した国が適切な指導監督を行わなかった」と主張している。
原告側代理人によると、民間の過労死を巡って国の監督責任を問う訴訟は初めて。
訴えによると、男性は07年4月に入社。千葉事業所に配属されて現場監督などをしていた。人手不足や工期遅れなどから長時間労働を強いられ、08年1~8月の時間外労働は月平均約123時間で、7月には200時間を超えた。男性は精神障害を発症し、同年11月に自殺。昨年9月に労災認定された。
会社と労組は、月150時間(納期が切迫している時は月200時間)までの時間外労働を認める協定を結んでいた。遺族側は「労働関係法令に違反している」と会社の責任を問うとともに、協定を受理した千葉労働基準監督署についても「会社や組合に是正を求めることなく受理し、適切な指導監督を行わなかった」と主張している。
(以下略)
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しかし、これは氷山の一角に過ぎません。時間外労働に関しての労使協定について、労基署は超過重労働を事実上黙認し続けています。だいたい、労働時間については労基法で1日8時間、週40時間という規定があり、これ以上の労働時間は基本的に「超法規的」で、だからこそ労働基準法36条に労使間合意の必要(36協定)が定められているのです。
この36協定について、いつの間にか「月45時間までならOK」という 「基準」が労働行政の場でできてしまい、企業にとっては、形だけの労使協定さえ結べば(労働者代表の選出をまともにやっている企業など少ない)、これが最低限の労働時間であるかのように扱われるので、1日9時間以上労働のになっている企業が多く生まれているという現実があります。
このことだけでも大問題だと思うのですが、労使協定に「例外」を設けて、さらに労働時間を延長させる企業が多くあります。
今回、訴訟になって企業では(納期が切迫している時は月200時間までの時間外労働を認める)となっていたそうです。とんでもないことです。
そもそも、企業活動は、ある面から見ると、常に「納期が切迫して」います。企業間競争が激しくなり、無理矢理仕事をとってくる営業から来る仕事は、常に「納期が切迫している」のです。
似たような事例は、最近半年の間に、私たちの組合でも2件相談を受け、2件とも現在団体交渉でその実態を明らかにしています。
1、IT企業における労使協定で、「特段の場合」として月80時間までの時間外労働が、労基署によって認められてしまったが、実際は職場への泊まり込みを含め、10時間を大きく超える時間外労働と休日労働が続き、とうとうしていた労働者は病気になり休職した事例(東京・品川労基署が時間外労働を認めているケース)
2、IT企業における労使協定で、「(前略)人員不足やトラブルへの対応、その他臨時業務への対応等が有った場合」は、月80時間までの時間外労働、年600時間の時間外労働が労基署によって認められ、実際は、この労働時間を大きく上回る時間労働したため、作業能率が落ち、会社から大幅減給を言い渡された事例(東京・中央労基署が時間外労働を認めているケース)
この2件の場合、どうやら労基署はプログラマやSEについて、月80時間、年600時間までの時間外労働を認める基準があると思わざるを得ません。そして、下請けのIT企業などでは、これが一旦認められると、この時間外労働時間が「最低基準」と化してゆく傾向があります。この二件とも、最大で月200時間を超える時間外労働が発生しています。
過重労働の歯止めである週40時間労働(月160時間程度)が、36協定が有れば45時間まで時間外労働がOKとなり、ならば、それが歯止めになるかというと、現実は、特例として、月80時間までの時間外労働が黙認となっている現実、そして、労働者の健康を考慮しない企業は、労働者が壊れれば休職そして、休職期間切れ解雇や、成績不良での退職強要などで、労働者を次々と使い捨ててゆく・・・・。これが労基署によってお墨付きをもらった企業の実情です。
だいたい、IT企業の「業務」、IT労働者の仕事といえば「トラブル」「緊急事態」への対処も主なものともいえます。だからこそ、IT下請け企業が成立するのです。しかし、現実を見ない労働行政は、この日常的業務(すなわち、本来週40時間労働の範囲でなければならない)をもって、いつ終わるともわからない超長時間労働の例外を認めているのです。
国の労働行政の労働時間根本的に改められねばなりません。労基署が月80時間まで、年600時間までの時間外労働を認めている現状は、言い換えれば労基署がIT職場の蟹工船的な状況(このような長時間労働を強いられる企業においては、実際の労働時間で計算すると時給が最低賃金を下回る場合が珍しくありません)を作っているともいえます。
労基署の本来の役目とは、このような過重労働が生じないようにすることではないでしょうか?
(カワセミ)
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