経験から思う。共謀罪の恐ろしさ
「共謀」は恣意的に作られていきます。
昨日、「共謀罪」を新設するという、「組織犯罪処罰法改正案」についての、参考人質疑が衆議院法務委で行われました。
まさか、このようなデタラメな法案が国会を通るはずがないと思っていたのは大間違いでした。民主党メール問題のゴタゴタなどが終わってみれば、「共謀罪」が成立直前となっていたのでした。
昨日の参考人質疑では、「共謀罪」賛成の立場から、藤本哲也・中央大学教授が「国際組織犯罪防止条約の批准が遅れている。組織犯罪に備えるため、世界標準に合わせることが必要だ」と述べたといいます(毎日新聞)。「世界標準」という言葉が出てくるときほど怪しい、というのはこの間いろいろと経験してきました。世界標準=USA標準で、日本は全く正当性のないイラクへの侵攻に加担してきたし、グローバルスタンダードの名の下で市場原理主義が横行しています。阪神と阪急の合併だってある意味では「世界標準」です。御用学者の意見というのはこの程度のものなのでしょう。同じ参考人の櫻井よし子さんは「この中の誰も責任をとれない」という言葉を発しましたが、御用学者に責任感はないのかもしれません。
一方、共同通信によると連合の高橋均副事務局長の反対意見は次の通りです。
--「社長の自宅まで行って交渉を継続しようと(組合員の間で)あらかじめ合意、確認したことが組織的な監禁の共謀罪にされる可能性がある」参考人として出席した連合の高橋均副事務局長は、中小企業で労働組合を結成し労使交渉を進める場合、経営者を追いかけて交渉を求めるケースが少なくないことを紹介し、こうした場合でも共謀罪が適用される恐れを指摘した--
しかし、労働組合そのものが「共謀団体」とされる恐ろしさについては、十分認識していないようです。
また、ジャーナリストの櫻井よし子さんは「国民を守るという共謀罪の趣旨は大事だ。だが、(共謀という)心の問題を法律に規定することは難しい。成立後適用範囲が拡大され、言論の自由が阻害される恐れもある」と述べ、政府案・与党案に懸念を示したといいます(毎日新聞記事より)。
連合の高橋さんも櫻井さんも、民主党の「修正案」には賛成の意向のようです。
それでよいのでしょうか?
法律は独り歩きします。
私たちユニオンの経験を以下に挙げます。
1、2001年春。私たちの組合事務所が突然40名近い警察官による捜査を受けました。これは、私たちと事務所スペースを共有していた別の労働組合が「威力業務妨害」「傷害」を行ったという理由によるものでした(結局、その組合および組合員は起訴されることもありませんでした)。私たちの労働組合の活動とは関係がないのですが、警察・公安当局は、私たちの事務所スペースを封鎖し、出入りを禁じ、労働相談電話の受取も認めませんでした(無関係かどうか分からないから=共謀しているかも知れないからという理由です)。そして、明らかに無関係である私たち組合の資料等の多くを持ち去ったのです。私たちは強く抗議し、これを数週間後には取り戻したのですが、1週間以上労働組合としての機能は麻痺しました。不当な捜査であれ、明らかに誤りの捜査であれ、現実に国家権力によってそれが行われると、無防備な私たちのような組合はなす術がないのです。現行法でも、このようなことが平然と行われています。ましてや定義があいまいで密告もなされる「共謀罪」が成立したらと、考えるだけでも恐ろしいことです。
2、2005年1月、私たちが開設しているホームページからリンクされているホームページが、さらにリンクしているブログ(分かりにくくてスミマセン)に、某社の名誉を毀損するコメント=書き込み(不特定の第三者)があったという理由(確かに、このコメントは品が無く嫌悪感を持たせるものでした)で、私たちの労働組合と組合員は某社から5000万円の損害賠償を請求される訴訟を起こされました。某社と私たち労働組合は、組合員の解雇をめぐって労働争議状態にありました。この裁判は結局、私たちの完全な勝訴(いわゆる門前払い判決)に終わったのですが、ここで注目すべきは、某社の訴状には私たちと全く関係が無く、連絡も取りようがない人間(実在するかも不明)が書いたブログ(これもリンク先のまたリンク先です!)へのコメントまで、「責任」を求められたということです。ホームページの運営および労働組合の意思決定について、某社側の訴状にはハッキリと「共謀」という言葉が使われていました。「共謀罪」が成立したら、このように全く予期せぬ「共謀」も問われるようになるのではないでしょうか?
私たちの活動の経験から、共謀罪には絶対に反対です。民主党の主張しているような修正案にも反対です。「共謀罪」という法律、「共謀」という言葉が独り歩きすることを知っているからです。共謀罪そのもの(そのような発想)を認めてはならないと思います。
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