「パワハラ」企業が都内で6社に1社? 現実はもっと深刻だけど・・・。
パワハラへの対応法は?
3月20日東京新聞朝刊に「上司の嫌がらせ深刻」という記事が掲載されました。「東京都労働相談情報センター(東京・飯田橋)の調査で分かった」ところによると、「上司が職務上の地位や影響力を背景に職場で嫌がらせをする「パワーハラスメント(パワハラ)」があった企業がほぼ六社に一社に達すること」というのです。
この調査は今年の2月に従業員30人以上の都内の企業3000社を対象にして実施し954社からの回答があったといいます。このような調査に「回答する」企業は比較的まともな企業と思われるので、回答しなかった企業や、従業員30名未満の企業(ワンマン経営や同族経営が多い)の事も考え併せれば、この数字よりもかなり高い率で、「パワハラ」が蔓延していることが想像されます。
最近、職場における上司による嫌がらせについて、労働組合への相談が増えているのは事実です。会社を辞めたいという相談と、上司による嫌がらせの相談、これが多くなっています。なぜか?1995年頃にピークとなった「リストラ」においても嫌がらせが頻発しましたが、それとどこが違うのでしょうか?
リストラを強行するための嫌がらせは、会社ぐるみのものでした。組織的に、ときには嫌がらせのマニュアルとでもいうものまで作り、退職強要を行い、人員削減を強行しました。
最近は、これとは少し違います。上司の個人的な嫌がらせが目立ちます。また、上司が明らかにストレス過多でおかしくなっている場合もあります。
同調査は述べています「仕事の失敗や実績の低さについて、執拗(しつよう)に部下を追及する」「必要以上に大声でどなる」と。そしてその原因として「成果主義が浸透して上司が部下への締め付けを強めていることなどが背景にある」としています。
「成果主義」が浸透している? この「成果主義」という言葉も曲者です。リストラが単なる「解雇」と同意語になったように、成果主義が「経営者が勝手に定めた目標の達成度主義」になっているのではないでしょうか?いや企業によっては経営の明確な目標も基準もなく、ただ単に賃金引き下げの理由にしかなってないのでは?
よくいわれているように、日本企業において「成果主義」は破綻しています。経営目標の開示と必要な資料提供、そして明確な雇用契約と達成目標の客観性と、労使間の同意があってはじめて、「成果」を判断できるのですから、成果主義など簡単には導入できないのです。ですから行政サイドは簡単に「成果主義の浸透」などと語らないようにして欲しく思います。
要するに、人員削減と、無理な経営目標によって管理職が疲弊しているということ、それに「成果主義」「実力主義」の名の下で雇用契約や賃金体系がいい加減になり、職場が荒れているということだと思います。
また、いわゆるパワハラが生じやすいケースもあります。それは・・・。
1、子会社あるいは孫会社。同一資本の親会社から管理職が「天下って」くる場合、その管理職が「リストラ」されて親会社から追い出されたような形になっている場合は、子会社や孫会社で「パワハラ」を行いがちです。「成果主義」もこのような会社では、親会社の定める数値をただこなすだけの場合が多く、その数値が正しいのか否かについては「問答無用」なので、特に親会社から「出向」してきている管理職や社長(子会社や孫会社の社長など、親会社の部長にも頭が上がらない場合があります)はストレスも強くて、時には暴走します。
2、公益法人あるいはそれと関連する会社、「天下ってくる人たち」が、自らの権威をひけらかすために無理難題を部下に対して行うことがよくあります(天下りは2年か3年ごとに代わりますから、はじめに「ガツン」と強そうなところを見せたいのだと思います)。複数の天下りルートがあるような場合は、出来れば自分達のルートを強くしておきたいなどの思いもあるようです。
3、外資系企業で、雇われ社長や、渡り歩き「マネージャー」が行うパワハラ。自分の能力以上が出来ると会社に売り込んでくる無能な社長やマネージャーには、全てを部下のせいにするタイプがいます。このような者と遭遇したときはまさに不幸なのです。
4、経営者(あるいは経営者一族)が会社を私物化している場合。零細企業に時として見られるのですが、社長の感情に添わないと嫌がらせを受けるようなケース。
では、パワハラへの対応はどうすればよいか?
それは、個人の問題にしないこと。会社の労働環境の問題として対応することです。パワハラが行われるときは、いわゆる不法行為や、労働契約内容無視、労働基準法違反などが伴います。ここをきちんと抑えて、上司の責任は会社の責任あるいは親会社の責任として対応していきましょ。会社の労働組合が「生きて」いるのであれば(労働組合の幹部ぐるみのパワハラなどもありますので注意)労働組合を活用すること。あるいは個人で入れる労働組合に相談することを勧めます。また、労働者の側に立って考えてくれる弁護士に相談して(相談料は掛かります。しかし、無料相談よりはきちんと相談料を払った相談にしましょう)、対応策を練ることです。労基署や労働局の総合相談窓口はパワハラには上手く対応しません。
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